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「成績優秀者になると豪華なディナーが食べられる」。こう語るのは、ケニア南部のマクエニ県ンジウ村にある高校に通うアビガェルさん(16歳)だ。アビガェルさんは毎回学年トップの成績をとる。対照的に成績が悪い生徒は勉強する理由について「体罰を受けたくないから」と言う。「アドラー心理学」の視点からケニアの教育現場での動機付けを考察してみた。
勉強しないと30分の体罰
JICA海外協力隊員として私が派遣されたンジウ高校の教頭(60歳)は「理解が遅い生徒は多い。自ら学習しないから、体罰を科して勉強するよう促している」と説明する。ケニアでは体罰は法律で禁止。だが男子生徒であればお尻や頭、女子生徒であれば手の甲や手のひらを叱りながら木の棒で何度も叩くのは日常茶飯事。体罰を受けた生徒がすすり泣くことも。長い場合は30分ほど続く。
成績が悪い生徒に対しては、教師、生徒、保護者で3者面談を行う。保護者が目の前にいても教師は木の棒で生徒のお尻や頭、手の甲を叩く。保護者も「怠惰なことや悪いことをしたら、体罰されるのは当然。体罰を受けることで、何が悪いことか判断できるようになる。目の前で我が子が叩かれていても、それは仕方ない」と納得しているようすだ。
ンジウ高校に赴任して1カ月が過ぎたころ、私が受け持つクラスの生徒たちに「体罰は必要だと思うか」と聞いてみた。私の予想に反して47人中37人が「必要だと思う」と回答。「悪いことをしたら体罰をして正さないといけないから」と37人が同じ意見だった。「体罰が不要」と答えた生徒は「自分のことは自分で律することができる」と理由を説明した。
次に「体罰をする先生は好きか」と尋ねたところ、47人全員が「嫌い」と口をそろえた。反対に、体罰をしない教師は「生徒の話を聞いてくれるから好き」との意見が大勢を占める結果に。「体罰が必要」と答えた生徒の中からも「体罰がないと勉強できないと思っていたが、実際は体罰をしない先生の教科も勉強している」との声が聞かれた。