2025年に注目したい、「またトラ」から考える世界の移民問題

パナマとコロンビアの間に横たわる密林地帯「ダリエン」を命懸けで越えるベネズエラ難民ら。彼らの最終目的地は米国だ(写真はベネズエラの「ラジオ・フェ・イ・アレグリア・ノーティシアス」からパナマとコロンビアの間に横たわる密林地帯「ダリエン」を命懸けで越えるベネズエラ難民ら。彼らの最終目的地は米国だ(写真はベネズエラの「ラジオ・フェ・イ・アレグリア・ノーティシアス」から

バイデン政権の対応を3分の2は「不支持」

不法移民の流入をストップさせようとトランプ氏が前政権のとき、新型コロナの感染がちょうど広がり始めた20年3月に施行したのが、「タイトル42」と呼ばれる措置です。

これは、感染拡大の防止を名目として、メキシコ国境で拘束した不法入国者を、原則、亡命の審査をせずに即時送還させるというもの。タイトル42を盾にした即時送還は200万件を超えたといわれます。

その後、バイデン政権が誕生し、コロナ禍も終息したため、23年5月11日に「タイトル42」は失効しました。すると米国へ入ってくる移民は激増します。

米国の税関・国境警備局によると、メキシコとの国境地帯で23年12月に拘束されたのは25万人。1日当たり8000人以上。凄まじい数です。23年度(22年10月~23年9月の1年間)だと250万人。過去最多を記録しました。「行くなら今だ!」とみんな米国を目指したのです。

「タイトル42」が失効してからは、「タイトル8」と呼ばれる通常の入国管理に戻りました。といってもバイデン政権は移民を歓迎するわけではありません。

共和党は常々、「バイデン政権(民主党)は移民に甘い」と批判してきました。またAP通信などが23年3月に実施した世論調査をみても、バイデン政権の国境問題への対応について「米国民の3分の2は不支持」です。

さらに米国の調査会社ギャラップが24年4月末に実施した世論調査でも、米国民の27%が、経済やインフレよりも「移民問題」を最重視すると答えています。

米国民の世論を踏まえてバイデン政権が導入した新たな規制は、不法入国者には難民申請の資格を認めず、再入国を最低5年禁じるというもの。禁止期間に再び米国への越境を試みて拘束されると、罪に問われる可能性があるとのことです。

加えて24年6月には、不法移民の越境者数が7日間で1日平均2500人以上になったら、その翌日から、入国の一時停止や制限を課す、とのルールを導入しました。また7日連続で1日平均1500人を下回れば、2週間後に移民に対して国境を再び開放します。

大統領選絡みのこうした厳格化が影響して、今年は移民の入国数が激減しました。24年8月に拘束された不法移民の数は5万8000人と、23年12月の4分の1以下です。

ただ、トランプ氏の大統領就任を前に再び、「行くなら今だ!」と、メキシコとの国境地帯では「駆け込み越境」の動きも起きているようです。

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