自由学園(東京・東久留米)は2024年12月15日、中部アフリカのコンゴ共和国から狩猟採集民ピグミー2人を招き、トークイベントを開催した。熱帯林を熟知するピグミーの知恵を借り30年以上現地で調査研究をする、NPO法人日本森林管理協議会(FSCジャパン)事務局長の西原智昭さんも登壇。「ンボテ!」とリンガラ語のあいさつを会場と交わし、ピグミーの日常と森で生きる力、資源開発を原因とする熱帯林の危機などを紹介した。
「ゾウ道」を完璧に記憶
アマゾンに次いで世界で2番目の面積を誇るコンゴ盆地の森から来日したのは、2人のピグミーの男性、エリック・アンボロさんとガストン・アベアさん。ともに40代で、森で生きる術を知る最後の世代だ。子どものころは森に住み、親と一緒に狩猟採集生活を営んだ。
西原さんは「森で生きるピグミーは、私たちが失った人間本来の鋭い五感を残している」と語る。イベントの中でも、アンボロさんがピグミーの並はずれた視力を実演。客席の後ろにまわり、約20メートル離れたステージ上のA4用紙に貼った1センチほどのシール3色すべてを、見事に言い当てた。客席から拍手がわき起こった。
ピグミーのこうした能力に西原さんは何度も助けられた。保護色で身を隠す猛毒のヘビなど、森には危険が多い。「私ならすぐ近くにいても気づかないが、ピグミーは10メートル以上の距離から見つけて、気をつけろと教えてくれる」(西原さん)。ピグミーなしで安全に森を歩くことはできない。
五感以外で西原さんが驚いたのは、ピグミーの記憶力だ。文字をもたない彼らは、必要なことはすべて記憶する。森の中にはゾウが通った後にできる「ゾウ道」が無数に入り組む。それをピグミーは地図を作らず完璧に記憶し、森の中を迷わず歩く。
ピグミーはまた、言語能力も抜群だ。アンボロさんとアベアさんは、それぞれ5つ以上の言葉を話すという。コンゴ共和国の公用語であるフランス語。現地で一般的に話されるリンガラ語、ムヌクトバ語。訪問者がよく話す英語。このほかにもそれぞれの出身部族の言葉や、現在住む村の言葉も話す。