400人に心のケアを
政権崩壊の影響は、ピースオブシリアがシリア北西部で運営するサクラ幼稚園に通う国内避難民の家族にも及ぶ。「政権が崩壊して10日ほどで、345人いた園児が310人ほどに減った。アサド政権が支配していた地域から逃れてきた家族が故郷に帰ったから」とアナスさんは説明する。すでに1割の園児とその家族が移動を始めた計算だ。
国内外から故郷に帰る避難民の子どもたちが教育を受け続けるためには何が必要なのか。ピースオブシリアはアラビア語や勉強の支援に加えて、心のケアの重要性を指摘する。
ピースオブシリアの支援対象には、内戦と避難生活によるトラウマを抱える子どもたちも多い。「内戦で家族を亡くし、学校が空爆の標的となった。治安が悪いため外で遊べず、家に閉じこもる状態が続いた」(ピースオブシリアのスタッフ)
そこでピースオブシリアは、シリアの子どもたちが学校に復帰するための緊急支援プロジェクトを立ち上げた。心のケアの専門家とともに巡回し、対話や体を動かす遊びといったアクティビティを届けるというものだ。
対象は、北部に位置するシリア第2の都市アレッポの周辺に住む4~16歳の子ども400人。これまではトルコ軍、反体制派が支配したアレッポ郊外での支援にとどまっていたが、アサド政権が倒れたことでアレッポ市内にも支援を届けられるようになった。
ピースオブシリアは、2023年2月に起きたトルコ・シリア地震の後も心のケアの活動を実施。参加した子どもの75%が復学できたという。地震の後に設立した心のケアセンターでもおよそ1年の間に、戦争と地震のトラウマを抱えた子ども、親、学生、教師を含む1000人以上をサポートした。今回も同じレベルの成果を目指す。
内戦が終結しても難しいのはこれからだ。