尊厳と歴史を侮辱するのと同じ
オリーブ農家に対するイスラエル軍や入植者の攻撃も後を絶たない。ヨルダン川西岸地区の北部にあるジェニン県ファクーア村で2024年10月、オリーブを収穫中の60歳のパレスチナ人女性が殺された。同月にはまた、ナブルス県で3人の子どもが犠牲になった。「収穫期は命の危険にさらされても畑に入らないといけない(生きていけない)」とサリームさんは話す。
イスラエル入植者からの暴力や嫌がらせも多い。パレスチナの環境保護を目的とする研究機関ARIJ研究所によると、2024年のヨルダン川西岸地区で2万1000本以上の果樹が根こそぎ抜かれた。そのほとんどがオリーブだった。
オリーブの木の伐採はパレスチナ人の収入を絶つためだけではない。占領の歴史が背景にある。イスラエルは1967年の第3次中東戦争以降60年以上にわたってパレスチナのオリーブの木を切り倒し、入植地にしてきた。イスラエルの領土を広げると同時に、パレスチナ人に脅威を感じさせるためだという。
「オリーブの木は、(パレスチナの)祖先が何千年も前から育んできた歴史の証人。この土地にいる権利をパレスチナ人がもっているという証明だ。(オリーブの木を切ることは)収入に影響するだけではなく、パレスチナ人の尊厳と歴史を侮辱することと同じ」とサリームさんは話す。パレスチナ人にとってオリーブはイスラエルへの抵抗の象徴だという。
パレスチナ産オリーブオイルが買える
パレスチナ産のオリーブオイルは2004年から、パレスチナ農業復興委員会(PARC)とパレスチナ農業開発センター(UAWC)の2つのNGOの協力のもと輸出が始まった。日本のほかに欧州連合(EU)諸国や米国などのフェアトレード市場で売る。「オリーブオイルの裏側には、パレスチナの農民の闘争や抵抗が刻まれていることを思い出してほしい」とサリームさんは強調する。
2024年産の960缶のオリーブオイルはまもなく日本に届く予定だ。オルター・トレード・ジャパンがびん詰めする。エキストラバージンオリーブオイルのほか、せっけんも販売。姉妹団体であるNPO法人APLAが運営するオンラインショップから購入できる。