バングラ政府への抗議デモで負傷した受験生を救え、映像授業のe-Educationが生徒倍増へ

e-Educationが提供する映像授業で学ぶバングラデシュの農村の高校生

バングラデシュをはじめ4カ国で映像授業を提供する認定NPO法人e-Education(東京・千代田)はこのほど、バングラデシュで長期政権が崩壊した2024年8月の政変を受け、報告会を開催した。このなかで代表理事の三輪開人さんは「支援対象の生徒数を従来の100人から200人に増やしたい」と語った。うち半分は反政府デモに巻き込まれ、けがやメンタルの問題を負った生徒に充てるという。

e-Educationの映像授業は東進ハイスクールがモデルだ。三輪さんが早稲田大学に通っていたとき、「今でしょ!」で有名な東進の林修先生のアシスタントとして働いていたことが背景にある。

e-Educationの共同創業者のひとり、マヒン・マティンさんは首都ダッカから150キロメートル南に離れたハムチャー村の出身。2007年に40年ぶりに村からダッカ大学に合格した。「マヒンさんを子どもたちのロールモデルにしたい」と考えた三輪さんは繰り返しマヒンさんに会いに行き、信頼関係を築いた。

映像授業を受けるのはバングラデシュ農村部の高校生だ。ハムチャー村で支援を始めた2010年から14年連続で毎年、同国全土から“日本の東大”にあたるダッカ大学に合格者を出している。 

デモ死傷者の8割は学生だった

バングラデシュでは2024年8月、若者を中心とする反政府デモが激化した。その理由は、1975年のバングラデシュ独立戦争を戦った兵士の家族を公務員採用で優遇する制度がいまだに残っていること。採用枠の3割を元兵士の家族に割り当てていた。2018年に廃止が決まったものの、2024年6月に政府が撤回。デモによる治安の悪化を受け、ハシナ首相(当時)はインドへ逃亡した。

反政府デモによる死者は1500人以上、負傷者は1万9200人以上にのぼった。この被害者の約8割が学生。400人が視力を失ったという。

「政府への抗議の意味を込めて、e-Educationの現地スタッフや生徒らはフェイスブックのアイコンを赤の画像(血や怒り、暴力を象徴する)に変えた」(三輪さん)

公務員の採用枠のうち、一般市民に割り当てられていたのは約4割だった。全体の約3割は元兵士の家族に、別の約3割は女性、障がい者、少数民族、少数派宗教の信仰者などの社会的弱者だ。

ハシナ氏が国外逃亡した翌日、数百カ所のヒンドゥー教の寺院が燃やされた。「社会的弱者に含まれるヒンドゥー教徒が一部のデモ参加者に狙われた」と三輪さんは説明する。

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