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重労働の連鎖を止められるか
「カカオ農家になりたい子どもはほとんどいない」と市川さんは言う。カカオ農園で働く子どもたちに将来の夢についてインタビューしたところ、教師や裁判官になりたいとの答えが多かった。
「子どもをカカオ農家にさせたくない」と話すカカオ農家の親も多い。その理由は、農作業の肉体的な負担が大きいからだ。子どもが手伝うのは農園の開墾や草むしり、収穫したカカオ豆の運搬など。20キログラムのカカオ豆が入った重たいかごを頭に乗せて運ぶこともある。
多くの農家が「常に体が痛い」と訴える。代わりに子どもを働かせるのはそのためだ。「子どものころから(ハードに)働いていると、大人になったときは体がボロボロ。(重労働の)負の連鎖が起きる」と白木さんは話す。
収穫の3分の2が地主に
貧しいカカオ農家の中には土地を持たない人もいる。降雨量が少なく農業に適さないガーナ北部や隣国のブルキナファソ、トーゴなどからガーナ南部へ移住してきた農民たちがその一部だ。
土地を持たない農家は、地主から土地を借りてカカオを栽培する。収穫したカカオの2分の1から3分の2を地主に納めるため、子どもの教育にお金を割く余裕はない。
苦しむカカオ農家を減らそうとACEはかねてから、ガーナ政府が2018年に始めた、10前後の町や村からなる地域を「児童労働フリーゾーン(CLFZ)」として認定する制度の仕組み作りをサポートしてきた。
ガーナ政府から認定を受けるための条件は25項目。子どもの保護に関する条例が制定されていること、学校が整備されていること、児童・生徒の出席率が高いことなど。「今年(2025年)の6月12日の児童労働反対世界デーに、ガーナ初の児童労働フリーゾーンとして認定された地域を発表したい」と白木さんは目標を語る。