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認定NPO法人テラ・ルネッサンスは1月9日、ウクライナの国内避難民の支援状況についてオンライン報告会を開催した。同団体ハンガリー事務所長のコーシャ・バーリン・レイさんが登壇。ロシアに隣接するウクライナの東部や首都キーウからの避難民が集まる西部のザカルパッチャ州には国連やウクライナ政府からの支援がほとんど届いていない、と事態の深刻さを述べた。
ロシアがウクライナを侵攻して2月24日で3年。故郷を追われたウクライナ人は1月時点でおよそ1040万人。内訳は国外およそ670万人、国内およそ370万人だ。ただ2022年末の国内避難民は約810万人だったことから帰還民も多い。
「この3年で国外に逃げられたのは中流階級以上の人。最も脆弱な層が国内にとどまっている」とコーシャさん。ザカルパッチャ州に避難するのは、パスポートや身分証明書をもたない貧困層だ。地元の高齢者が自宅の一室や空き家を避難民に貸し、彼らの暮らしを支えているという。
避難民同士が助け合う
テラ・ルネッサンスは2022年3月から、困窮する高齢者や避難民に日用品や食料、衣類を配り始めた。また週に2回、40食を炊き出しする。ロシア軍に発電所が空爆された影響で停電が続くため、薪やブリケットなどの燃料も支給する。
生活物資の支援に加えて、テラ・ルネッサンスはウクライナの国内避難民が自立できるようバックアップもしている。そのひとつが、社会貢献をするとお金がもらえる仕組み「CSCs(Cash for Social Contributions)」だ。
この仕組みでは、避難民向けの炊き出しや薪づくりを手伝ってもらい、その対価として現金を渡す。避難民は平均して週2回、1日6時間ほど働く。1日(6時間)で 手にできるのは270フリブニャ(約1000円)。「避難民が、さらに困っている避難民を助けるこの仕組みは意義も大きい」(コーシャさん)
テラ・ルネッサンスはこのほか、炊き出しの支援対象である国内避難民の中で最も貧しい130人に年に2回50ユーロ(約7800円、ウクライナの1カ月分の年金に相当)ずつ支給する。障がいや、糖尿病などの持病を抱える人も少なくなく、働けないからだ。
高齢者や持病を抱える貧困層は、ロシアがウクライナを侵攻する前よりも困窮した暮らしを余儀なくされている。「侵攻前は、彼らの孫はハンガリーに出稼ぎに行っていた。だが今は孫がウクライナ政府に徴兵され、ザカルパッチャ州には戻れない」とコーシャさんは語る。