ミャンマー民主化運動に誰もがかかわれる雑貨店がチェンマイにあった! 20円のステッカーから2900円のワンピースまで

ゴールデンランドの店内には、民主化運動で女性が活躍したシンボルの旗布が飾られる

タイのチェンマイに、2021年に起きた軍事クーデターの影響で仕事が奪われたミャンマー人を支援するハンドクラフトの店がある。創業者は、ミャンマー・ヤンゴンの郊外で約5年暮らし、ミャンマー語も堪能な米国人女性のブリアナ・ランダルさん。「民主化運動の火が消えないように」と、店内にはお金がないミャンマー人でも気軽に買える5バーツ(約20円)の商品も並ぶ。

店名は「ゴールデン ランド ソリダリティ コレクティブ」。2023年2月にオンラインショップを立ち上げ、4カ月後にチェンマイで実店舗をオープンさせた。

女性の腰巻き布は「汚い」のか

この店を象徴する商品が「ロープでつなげた旗布」だ。

軍事クーデターで全権を掌握した軍政に対抗する民主化運動では、ミャンマーの女性たちは、道の端から端へロープを渡し、そこにカラフルなロンジー(ミャンマー人が身に着ける伝統的な腰布)をぶら下げ、バリケードのように道を塞いだ。「国軍兵士の男性はロンジーの下をくぐれない。なぜならロンジーは“不浄”だから」と、ゴールデンランドの創設メンバーでミャンマー人のコーラルさんは説明する。

上座部仏教には「浄」と「不浄」の概念がある。女性が下半身に身に着けるロンジー(タメイン)は不浄とされる。「不浄とされるモノの下を男性がくぐることは決してない。国軍兵士は実際、くぐらなかった」(コーラルさん)

タメインを三角に切り取り、ロープでつなげた旗布は店内にいくつも飾られている。ミャンマーの異なる民族の伝統的なタメインで作られていて、鮮やかな色彩が特徴。作り手は、軍に抗議したことで逮捕の危険が迫り、国内外に避難したミャンマーの女性たちだ。値段はおよそ400バーツ(約1800円)。

ゴールデンランドが推すもうひとつの商品が、ヤンゴン在住で、ポリオにかかったため生まれつき腕がない60代の男性画家が描く風景画だ。彼は足の指で筆をつかみ、シャン州にあるインレー湖などを細かく描写する。「ミャンマー国内で絵を販売しようとすると、バスに乗って時間をかけて出かけなければならない。だがゴールデンランドでまとめて発注してタイに送れば彼の負担も軽減できる」とランダルさんは語る。

店の客の大半はチェンマイ在住のミャンマー人だ。彼らが祖国にとどまる同胞たちの生活を少しでも支援できるよう、5バーツ(約20円)のステッカーから、シール、絵ハガキなど手ごろな商品もラインアップする。「春の革命(民主化運動)」のために戦うミャンマー人を応援する言葉やイラストが入っている。

ミャンマー関連の商品で一番高価なものは、タイに逃れた女性が、染めた布で手作りしたワンピース。650バーツ(約2900円)だ。

商品を購入するのはフェイスブックを見て店を訪ねる旅行者や、オンラインでは海外のNGOからの注文も入る。「ちょうど今日、日本への荷物を箱詰めしていた」とランダルさん。送り先の日本人女性と取引が始まったのは、ゴールデンランドの商品のひとつであるピーナツバターに惹かれ、インスタグラムを通じて店に連絡が入ったことがきっかけだった。ミャンマーではマグウェやマンダレーの乾燥地などがピーナツやゴマの名産地として知られる。

ポリオで腕をもたない画家が足で一枚ずつ丁寧に描かく絵は80バーツ(約360円)から。精巧な筆致だ

ピーナツバターは無農薬でビタミン豊富

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