母は刑務所・年老いた台湾移民の父はミャンマーに残る、「私はタイでメディア・コーディネーターを続けたい」

タイへ避難する際に撮った写真を見せるネンモーン氏。夫とともに今はチェンマイに住むが、ミャンマーの刑務所にいる母、年老いた父、弟のことが気がかりだ

タイ・チェンマイに避難してきたメディア・コーディネーターとして活動するミャンマー人がいる。25歳の女性、ネンモーン氏(仮名)だ。彼女の母はジャーナリストで、投獄されたまま。刑務所にいる母のことも、ミャンマー・シャン州に残る年老いた父と若い弟のことも心配だというネンモーン氏は「不審なことは黙過せず」をモットーに今もメディア・コーディネーターとして働き続ける。

10錠の鎮痛剤で投獄

ネンモーン氏はシャン州の州都タウンジーで生まれ育った。52歳の母は国民民主連盟(NLD、党首はアウンサンスーチー氏)の党員でジャーナリスト。父(73)は台湾生まれの移民としてミャンマーにやって来た。

ネンモーン氏が大学3年生だった2021年2月1日、国軍がクーデターを起こした。軍政に抵抗しようとネンモーン氏は授業をボイコットする「市民的不服従運動」(CDM)に参加するだけでなく、民主化運動を伝えるチャンネル「タウンジー・ヌイウー」(ビルマ語で「タウンジーの春」の意)をテレグラム(ラインのようなSNS)上に立ち上げた。

2021年12月、母が国軍に捕まり、10年の禁固刑に処せられた。理由は、民主派の武装組織「国民防衛軍」(PDF)を支援したことがテロ行為への資金提供を犯罪とする刑法第50条に抵触しているというものだ。

国内避難民を支援するために母が送ろうとしていた古着のポケットに10錠の解熱鎮痛剤が入っていたことがPDF支援の証拠だとされた。ネンモーン氏は「理由はこじつけ。なんでもよかったと思う。ジャーナリストでNLDの党員でもある母の“逮捕ありき”だった」と言う。

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