
国軍の言いなりは嫌だ
ミャンマー国軍がノウェイさんを捕まえようとしたのは、彼が市民不服従運動(CDM)として公務員を辞めたうえ、ミャンマー国内で民主化運動を支える役割を担っていたからだ。資金を調達し、軍事クーデターをきっかけに他国へ逃れた難民や国内の民主化勢力に送金していた。
ミャンマーが民政移管・民主化された2011年から2021年までの10年にわたる自由と経済成長を経験したノウェイさんは民主化への復帰を強く望む。公務員として働いていた日々で実感したのは「民主政権のもとでは社会や環境への影響を考慮し、道理に反する指示が優先されることはなかった」こと。対照的に2021年2月以降の軍事政権下では「正当性がなくても政府の命令に従わざるを得なかった」と語る。
バラ色ではないタイ生活
民主化運動に熱心な半面、ノウェイさんにも生活がある。ここチェンマイでは生計を立てるために週5日、日系企業で働く。ミャンマーでは自分の専門性を生かす仕事をしていたが、いまの仕事に専門性は関係ない。「毎日の仕事は大変だし疲れる」と語る。
「タイで仕事を見つけるのは本当に大変だった」(ノウェイさん)。2024年4月にチェンマイに来てから半年にわたって求職活動をし、ようやく見つけたのがいまの仕事だ。国家警察命令第327号によると、タイでは外国人1人を雇うごとにタイ人4人を雇用する義務がある。この決まりがノウェイさんをはじめミャンマー人の就職を難しくする。また彼自身、どんな仕事でもいいというわけではなかった。肉体労働などワーカーの仕事は元公務員の彼にとって抵抗があったのだ。
苦労して手に入れた仕事だが、満足はしていない。「自分の専門性を生かせる仕事をしたい」(ノウェイさん)。日系企業で働きながら転職活動を進め、志望する企業からの返答を待つ。
仕事での気苦労や異国暮らしでたまるストレスは、プランター菜園、趣味の料理、同胞の友人たちとの交流で癒す。朝の日課はプランターで育てる野菜に水をやること。夜はミャンマー人の友人たちと、プランターの野菜などを使ってミャンマー料理を作り、一緒にお酒を飲む。