学校しか楽しい場所がないパレスチナの子どもたち、イスラエル人入植者から暴力・嫌がらせ

パレスチナ自治区の学校で理科の実験をする子どもたち

浸水しても助けてくれない

パレスチナ子どものキャンペーンは、教育の支援だけではなく、炊き出しもしている。ガザ南部のラファで2024年1月から炊き出しを始めた。だがイスラエル政府が2024年8月、ガザ南部の住民に避難指示を出したことから、炊き出しの拠点を中部に変更。2025年2月時点でも炊き出しを続ける。

炊き出しは弁当形式だ。大きな寸胴の鍋を4、5個並べて、レンズ豆や野菜スープを調理。容器に詰め、それを住民が避難生活をするテントを回って配る。届けたのは累計で7万世帯にのぼる。

パレスチナ子どものキャンペーンが炊き出しするガザ中部のムシャーラ地区では2024年12月、大雨の影響でテントが浸水した。被害の状況を撮影する現地スタッフに対して住民は「支援しないなら帰れ」「ビデオを撮るな」と激高するなど、現場は殺伐とした雰囲気が漂っていたという。

現地スタッフのインタビューに応じたムハンマドくん(15)は、ガザ北部からムシャーラ地区に逃れてきた。11人の家族とともにテントで生活する。服や寝床、床に敷いたじゅうたんが雨水で浸水した。

「幼い妹が泥に埋もれてしまった。でも奇跡的に僕が救出できた」と語るムハンマドくんの靴やズボンは泥まみれだったという。

ムハンマドくんが暮らすテントの中には皮膚がんを患う母もいる。それでも、崩れかけたテントへの援助はない。

テントの状態はひどい。どうやって寝ればいいのかわからない。「見て見ぬふりをしないでください」とムハンマドくんの母は、パレスチナ子どものキャンペーンの現地スタッフが撮ったビデオに向かって話し、ほかのアラブ諸国をはじめとする外国にテントの支援を訴えた。

9割の子どもが栄養失調

ガザの子どもたちはイスラエル軍や入植者からの暴力だけでなく、飢餓にも苦しむ。1日1食か、それ以下で過ごすのが現状だ。9割が栄養失調。多くの子どもたちがごみ箱を漁ったり、物乞いをしたりしている。

「子どもたちに対する寄付は1口1000円から。炊き出し5食分に相当する」と中村さん。パレスチナ子どものキャンペーンはまた、ガザから届いた動画を発信するユーチューブチャンネルを運営。子どもたちへの心理サポートや炊き出し、障がい者のリハビリなど幅広い支援のようすも見られる。

ムハンマドくん一家が暮らすテントの中。大雨で水浸しになった

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