ナイジェリアの出稼ぎからベナンに帰ってきた綿花農家の男性、「子どもに同じ仕事はしてほしくない」

ベナン南西部のドボ市アホメ村で綿花を栽培するダビ・アベコさん(55歳)。若いころはナイジェリアで出稼ぎをしていた。写真は自宅の隣にある畑。家族が食べる野菜や果物を育てる

ベナン南西部のクッフォ県ドボ市アホメ村に、ナイジェリアで出稼ぎをした後、親の畑を継いで綿花などを栽培する男性がいる。ダビ・アベコさん(55歳)だ。11歳から20歳までの4人の子どもを育てる彼は「農業は体力的にも金銭的にも厳しい。子どもには自分と同じ仕事はしてほしくない」と胸の内を明かす。

照り付ける日差しのなか農作業

アベコさんが父から受け継いだ土地の広さは2ヘクタールだ(サッカー場およそ3つ分)。1ヘクタールで綿花を、残りの1ヘクタールでキャッサバやトウモロコシ、ニンジンなどを栽培する。妻は自宅の隣にある畑で家族が食べるトウモロコシなどを育てている。

収穫時期は、綿花は12月、キャッサバは12月と3月、トウモロコシは7月と12月。収穫はすべて手作業だ。特に12月は、綿花、キャッサバ、トウモロコシの3つが集中する。ベナンは12月でも日中は厳しい暑さだ。「(乾季で炎天下の中)キャッサバを掘り起こすのは過酷な作業だ」とアベコさんは語る。

綿花の卸価格は1キログラム200CFAフラン(約48円)。綿花を売る時期、場所、価格はすべてベナン政府が決めるという。買い取るのは、ドボ市にある政府系の工場。ここでは綿花から繊維にする。

ベナンのパトリス・タロン大統領は「綿花王」との異名を持つ。これは、同氏が綿花の広大なプランテーションを所有することに由来する。

平均年収の3分の1以下

綿花の収穫は年に1回。アベコさんの畑でとれる量は約2トン。年間の売り上げは約40万CFAフラン(約9万5800円)となる。だが実際に手元に残る金額はその半分の約20万CFAフラン(約4万7700円)だけだという。

綿花栽培に必要な経費は少なくないからだ。例えば、綿花を植える前に1ヘクタールの土地を整えるための人件費として2万5000CFAフラン(約5960円)かかる。また、綿花を植えた後は、雑草の除去や殺虫剤の購入・散布のために、2回にわたりそれぞれ2万CFAフラン(約4770円)が必要だという。

綿花やキャッサバ、トウモロコシ、その他の野菜をすべて含めたアベコさんの年収は約26万CFA(約6万2010円)。ベナンの1人当たり国民総所得(GNI)は1440ドル(約90万7000CFA、約21万6000円)だから3分の1以下だ。

アベコさんが育てた綿花。ゴルフボールのサイズの実の中に綿が入っている

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