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巨大鍋で2時間の蒸し作業
赤ヤシ油は、ベナン人が料理に広く使うポピュラーな油だ。
アブラヤシの実を収穫できるようになるのは植えてから4年後。その後約14年にわたって収穫が可能だ。実の収穫期は2~6月。収穫期になると赤く熟したアブラヤシの実を房ごとカットして、畑から5キロメートルほど離れた家の前へトライシクル(後ろに荷台のついたバイク)で運ぶ。
アブラヤシの房には数百の赤い実がなる。房から実を1つずつ手作業で取り外す。硬くて取れない場合は房ごと鍋で加熱して柔らかくする。取り外した実を今度は巨大な鍋の中に入れ、約2時間にわたって蒸す。柔らかくなった実を叩き、種を取り出す。
実を機械で潰し、赤い液体を絞り出す。この機械はレンタル。1回(70~100リットル)の使用料は500CFAフラン(約120円)だ。
その液体を火にかけ、水と油を分離させる。上澄みの油をすくい取ると赤ヤシ油の完成だ。
キャッサバ粉を作れない
ジェンヌさんは赤ヤシ油を25リットル単位で卸売りする。同業者が少なくなる時期に販売することで、より高い価格で売ることが可能だ。
収穫期の2~6月には、25リットルあたり 8000~1万4000CFAフラン(1900~3300円) で彼女は売るが、9月から1月のオフシーズンは 2万CFAフラン(約4700円) まで価格が上昇することも。販売時期を調整することで、収穫期と比べて 最大2.5倍の価格 で売れるのだ。
だがお金に困っているときは収穫期に販売することもあるという。
彼女の年収はおよそ100万CFAフラン(約23万8000円)。ベナンの1人当たり国民総所得(GNI)である1440ドル(約21万6000円)をわずかに上回る。
ジェンヌさんがつくる赤ヤシ油は年間で3000リットル超。彼女は毎シーズン、1~2人の仲買人に赤ヤシ油を売る。より多くの油をまとめて購入する相手を選ぶという。仲買人はその油をマルシェ(市場)で売る。
ジェンヌさんは例年、赤ヤシ油のほかにキャッサバを育て、ガリ(キャッサバ粉)を生産・販売していた。だが2025年は体調が悪くガリを作れないという。「赤ヤシ油の生産・販売の仕事で一番大変なのは、実を蒸す工程。火のそばにいるため暑さと煙で体調を崩してしまった。今はガリを作るのは難しい」(ジェンヌさん)

縦横約1メートル、高さ70センチメートルほどの大鍋。この鍋でアブラヤシの実を2時間蒸す(ドボ市グァジャメ村で撮影)