
ベナン南西部のドボ市ザフィ・ニャンマメイ村 にアブラヤシの葉柄(葉身と茎を接続している柄状の部分)からカゴを作って売る女性がいる。母から仕事を継いだ、30代とおぼしきクウディ・クリスティンさんだ。「カゴ作りは簡単な作業だから始めた。でも経済的に豊かではない」と話す。
カゴ作りしか知らなかった
クリスティンさんがカゴ作りを始めたのは10年前だ。母から編み方を学んだ。「ほかの仕事は教えてもらっていないから、やり方がわからない。カゴ作りはシンプルな作業。自分から望んで受け継いだ」とクリスティンさんは語る。
ベナンではアブラヤシの葉柄を原料に使ったカゴはポピュラーだ。大小さまざまなサイズがあり、トマトやトウモロコシなどの野菜やスパイスを入れる。
クリスティンさんはアブラヤシ畑を持っていない。アブラヤシの葉柄を仕入れ、自宅前の小さなスペースでカゴを編む。自宅の土地は借りたもので、賃料として毎月3000CFAフラン(約680円)を払う。
仕入れ値はアブラヤシの葉柄一束(30本)あたり500CFAフラン(約120円)。自宅まで届けてもらう。一度に一束だけ買うこともあれば、10束まとめて仕入れることも。葉柄一束分はおよそ2日で使い切る。
カゴ作りに使うナイフは1本500~600CFAフラン(約120~140円)。切れ味が悪くなると、新しいナイフに買い替える。
10年間ずっと2種類
クリスティンさんが作るカゴは大小2種類のみ。小さいカゴ(直径約45センチメートル、高さ約60センチメートル)なら約1時間、大きいカゴ(直径約65センチメートル、高さ80センチメートル)なら2~3時間で作る。1日に小さいカゴを5個、大きいカゴを3個ほど編むという。
クリスティンさんは10年間、母から教わった方法を変えずに2種類のカゴを作り続けている。近隣には4~5人の同業者がいるにもかかわらず、クリスティンさんは新商品の開発にも消極的だ。「カゴの形やサイズがほかと違うと、仲買人に買ってもらいにくいと思う」と説明する。
カゴ作りは葉柄の加工から始まる。ナイフで葉柄を縦に4つに割き、約1メートルごとにカットしたあと、さらに縦に3つに割く。
次に、土台を作る。加工した葉柄を14本用意し、そのうち1本の先端を二股に裂く。地面に、小さいカゴなら直径1メートル、大きいカゴなら直径2メートルの円を描く。2本1組の葉柄を7組用意し、円の中心で交差させ、星形に並べる。その上から、ロープのように加工した細長い葉柄を使い、円の形に編み込んでいく。
土台が完成したら、側面部分を編み上げ、最後に自然乾燥させれば完成だ。
「これ以外のカゴの作り方を分からない。だから違うカゴは作ったことがない」(クリスティンさん)

左側に映るのはアブラヤシの葉柄。右側は3つ重ねた大きなカゴ

小さなカゴの土台を作るようす。2本1組の葉柄を7組用意し、直径1メートルの円の中心で交差させて星型に配置する。ロープ状に加工した葉柄を使い、円形に編み込んでいるところだ