
「頭が痒い。水浴びをしよう」。と思っても、ベナンではそうもいかないようだ。ベナンの女性は自分の髪の毛で「ブレイズヘア」といわれる編み込みをしたり、エクステをつけるのが主流。エクステを一度つけると髪は洗えない。
長い髪で魅力アップ
ベナン南西部のクッフォ県ドボ市でヘアサロンを営む女性がいる。ファヌ・エミさん(36)だ。美容師として働いていた母を見て育った。「自分もこの仕事に将来就きたいと思うようになった」。ドボ市にあるヘアサロンの専門学校に4年通い、母のヘアサロンで7年手伝った。
ベナン人女性によると、ベナンの女性は週に3回、ヘアサロンに行くという。平均2〜3カ月に1回の日本人女性と比べると、その頻度は24倍以上だ。
ユニークなのは、ヘアスタイルを毎回変える人がほとんどであること。ベナンでは長い髪が美しい女性の象徴だ。エミさんは「ロングのエクステを後ろでお団子にしたものが一番人気。ロングヘアの女性がベナンでは美しいとされる。私も結婚する前は長い髪でモテていたのよ」と自慢げに語る。
エクステをつけるときはスタッフ4〜5人で顧客1人に対応する。所要時間は2時間ほどだ。
エクステの種類が豊富にある中で、アフリカの人工頭髪シェアで6割を占めるといわれるのが、日本の大手化学メーカー、カネカが作る「カネカロン」だ。「人気の理由は感触や見た目が人毛に近いし、軽量で柔らかくスタイリングしやすいこと。燃えにくいから安心して火を使った料理ができる。品質の高く、使いやすい」(エミさん)
ただ欠点もある。エクステをつけると、頭を洗えないことだ。熱帯のベナンでは常に汗をかく。髪の毛が蒸れ、フケや痒みの原因になる。頭皮のケアが必要だ。彼女らはオイルのスプレーやクリームを使ってかゆみや乾燥を防ぐ。また汗から出る塩分でエクステも痛む。
エクステは長くても1カ月で外す。かかる時間は30分程度。取り外す際に痛みはないという。「日本人の髪だったら取り外す時は痛いかもしれない。日本人の髪でやったことはないけれど」とエミさんは話す。

エミさんのヘアサロンで一番人気のヘアスタイルがこれ。「お団子を下ろせば髪の長さも強調できる。二通りのヘアスタイルを楽しめるのが特徴」(エミさん)

ベナン南西部のドボ市でヘアサロンを経営するエミさんは5人の子どもの母。「子どもたちには好きな職業に就いてほしい」と語る(店の前で撮影)