ベナン田舎の食堂店主の口癖「お金があったらやりたい」、挑戦できない裏に潜む“諦め社会”

ベナン南西部のドボ市中心部にある食堂を営むジネットさん(左から2人目)。多くの人が訪れる

お金を稼ぎたいという目標があっても「できないから」と挑戦を諦めるメンタリティをもつ人が、ベナンの田舎では少なくない。ベナン南西部のドボ市で食堂を営むダフエ・ジネットさん(40)もそのひとりだ。その日の生活に満足し、理由をつけて一歩を踏み出さないドボ市の人たちの胸の内を探った。

こだわりは特になし?

ジネットさんの食堂では4種類の飲み物を売る。イチオシは「ビサップ」という西アフリカ定番のハイビスカスのジュースだ。乾燥させたハイビスカスの花から抽出した液体は濃いワインレッド色で、味は甘酸っぱい。色のせいか、どこかシソにも似ている気がする。血を作る効果もあり、貧血の時にも良いという。

ジネットさんには悩み、いや望みがある。それは「お金をもっと稼ぎたい」ということ。ところが、収入を増やすために商品や売り方に工夫を凝らしたり、別の事業を始めたりしないのかと私が問うと、「お金があったらね」「やり方がわからないから」と何かと口実をつけて否定する。

ちなみにジネットさんの食堂でのビサップジュースの作り方は、レモングラスを煮出すところから始まる。その熱湯を乾燥ハイビスカスが入った鍋に移し、蓋をして10〜15分ほど蒸す。これに砂糖を加え、最後に「バナナ・エッセンス」を数滴振れば完成だ。「バナナのかおりになるわけではないが、風味が良くなる」とジネットさんは話す。

バナナ・エッセンスを足す、と聞くと、隠し味のように感じる。これはこの店独自の工夫なのか、と私は尋ねてみた。すると「そんなことはない、(ドボ市のビサップ売りの間では)一般的だ」とジネットさん。収入を増やすための独自の工夫かと思いきや、ありきたりだったのだ。

お金は本当にないのか

私は気を取り直して「新たな商品を作って、売り上げを増やそうと考えたことはあるのか」と質問してみた。ジネットさんは「バオバブジュースやアパン(トウモロコシから作るヨーグルトのような飲み物)も売ってみたい。ただしお金ができたらね」。

何かにつけてジネットさんは「お金がない」と繰り返す。その理由を尋ねると、学校に通う5人の子どもの養育費、食堂を手伝う姉妹に払う1000 CFAフラン(約245円)ずつの日当などを理由に挙げる。

ただジネットさんによると、食堂の1日の利益は「1万CFAフラン(約2400円)くらい」とのこと。ベナンの1人あたり国民総所得(GNI)は1400ドル(約20万6000円)、1日換算では約3.84ドル(約564円)になる。1万CFAフランはその4倍以上。ジネットさんの計算が正しいとすれば、そこまでお金がないとは言えなさそうだ。

またジネットさんの夫は食堂の隣で理容室を営んでいる。何かを始めるために家族や友人からお金を借りることはできないのか、と尋ねると、ジネットさんは「それはできない」と断言した。

ビサップ(ハイビスカス)ジュースを作っているところ。乾燥させたハイビスカスにレモングラスを煮出した熱湯をかけると、濃いワインレッド色の液体になる。病みつきになるおいしさだ

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