2050年までに人口が2400万人減る日本、移民受け入れの是非を考える

公益財団法人「日本国際交流センター」の毛受(めんじゅ)敏浩執行理事は5月16日、「人口減少時代の日本の選択―移民受け入れは是か非か?」とのテーマで、都内の東洋英和女学院大大学院で講演した。日本の人口が減少していく中、経済力を維持するための労働人口を確保するためには「移民の受け入れが不可欠。移民に対する日本人の偏見をなくすことが重要だ」と主張した。

■女性の活用も限界

国立社会保障・人口問題研究所が2012年1月に発表した「日本の将来推計人口」によると、2050年までに2425万人減少し、その後も毎年103万人以上のペースで減り続けていく。にもかかわらず日本の政治家が移民受け入れ制度を議論してこなかった点を毛受氏は危惧する。その理由について「票にならないし、右派勢力から攻撃のターゲットにされるリスクがあるからだ」と説明する。

日本政府や自治体が現在、労働人口を確保するためにとっている対策には「女性と高齢者の活用」と「地方創生による人口回復」がある。しかし、「どちらも十分な対策ではない」と毛受氏は述べる。

その理由として挙げたのは、女性と高齢者の活用には伸びしろがないこと。2012年にはすでに日本人の30代女性の70%が働いており、「その数が今後劇的に増えることはない」(毛受氏)からだ。

高齢者の活用にも毛受氏は言及。国立社会保障・人口問題研究所が2007年に集計したデータをもとに同氏が推計したところ、2035年には日本の人口の2割に当たる2200万人が75歳以上の「後期高齢者」になる見込みだ。しかし、65歳以上の労働力率も男性29.1%、女性13.1%と米国(男性21.9%、女性13.1%)とほぼ同じ水準。今後増加していくとは考えにくいという。

地方創生による人口回復について毛受氏は、一部では成功しても人口減少のペースが速いために大半の地域が数十年後に効果を望めないと断言した。さらに、政府が推進する「外国人技能研修制度」も「定住を認めていない」「労働契約違反が横行している」などの点で安定した労働人口確保にはつながらないとの見方だ。

■外国人の犯罪は半減

同氏はまた、日本が移民を受け入れるためには外国人への偏見を除去することも重要だと考えている。外国人による犯罪件数は減少傾向にあり、移民は犯罪者予備軍ではないと強調した。

2004年には2万人を超えていた外国人の検挙人数は2011年には約半分の1万人程度にまで減少している。欧州のような暴動が起きるのではという懸念に対しても「日本では(キリスト教とイスラム教の)宗教対立は起こりにくい」とその可能性を否定した。「多文化共生の意識を芽生えさせるための政策を国レベルで行うことが重要だ」と毛受氏は話す。

「移民受け入れについて日本人全体で、特に若者にたくさん考え、議論していただきたい」と同氏は講演を締めくくった。