6月12日は児童労働反対世界デー、中国の売春宿で働かされるベトナム人少女「1日の客は15人以上」

「1日に少なくとも15人の客(男性)と性交渉する」。これは、中国雲南省の河口(ハーカウ)にある売春宿で強制的に働かされていた17歳のベトナム人少女リンさん(仮名)の体験だ。リンさんは「服屋での仕事がある」とベトナム人の知人に騙され、中国の売春宿に連れてこられた。いわゆる人身取引だ。6月12日の「児童労働反対世界デー」にあわせて、ベトナムの児童労働、とりわけ児童買春の問題を考えたい。この体験談は、ハノイにある行政機関・女性開発センターが発行した報告書「人身取引の生還者~彼女たち自身の言葉で~」に基づく。

■「生理の血を止めろ」

「布を(膣内に)詰めて血を止めろ」。生理中のリンさんはある日、売春宿のオーナーにこう命じられた。

売春の仕事は、生理中だろうと関係ない。体調が悪くても熱があっても関係ない。1日に15人以上の客と性交渉を強要されたという。客の中には60代の男性や性交渉に興味をもった15歳の少年もいた。

ひとりの客には最大2時間対応する。血が出るほどひどい性交渉を求める客もいる。「(私は)動物のようだった」とリンさんは言う。電気コードで打たれたこともある。気を失うまで何度もだ。チップをくれる客もいたが、それはごく一部。リンさんの所持金を奪っていく客すらいた。

同じ売春宿で働かされていた女性が殺されるのをリンさんは見たことがある。その女性は売春宿から逃げようとしたところ、オーナーに見つかった。殴られ、ナイフで刺され、殺された。逃げたら、殺されるのだ。

殺されなくても、逃亡するとひどい仕打ちにあう。服を脱がされ、腕を窓に縛られ、体格のいい男性に電気コードで何度も打たれた女性もいるという。

■人身取引被害者の4割が18歳未満

リンさんはその後、深刻な病気にかかった。だが病院に行くことはもちろん許されない。そのため「売春宿で働きたい友人が故郷にいる」とオーナーにうそをついた。オーナーはリンさんを信じた。こうしてリンさんは故郷への切符を手に入れた。

故郷に着くと、ベトナム北部のトゥエンクアン省の社会保護センターに駆け込んだ。社会保護センターにハノイの避難施設「ピースハウス」を紹介された。ピースハウスは人身取引や家庭内暴力の被害にあった女性のシェルターで、女性開発センターが運営する。安全な場所や服、食べ物だけでなく、健康診断、心理カウンセリング、職業訓練なども被害女性たちに提供している。

ピースハウスによると、ピースハウスが保護した人身取引被害者の約40%は18歳未満の女の子。しかも、18歳未満の人身取引被害者は増加傾向にあるという。

(ハノイ=有松沙綾香)