7日にベネズエラ大統領選、“バラマキ戦略”でチャベスは4選なるか

デモ参加者に弁当を配る政府関係者(ベネズエラ・ボリーバル州、今回の大統領選挙とは無関係)。お金をもらってデモに参加するのはベネズエラでは日常茶飯事

ベネズエラの大統領選挙が10月7日、投票日を迎える。立候補者は5人だが、事実上、反米・社会主義を掲げるウゴ・チャベス大統領と主要野党の統一候補エンリケ・カプリレス氏(前ミランダ州知事)の一騎打ち。現地のベネズエラ人に聞いても「これまでにない接戦」と政権交代に期待を込める声が多い。

ただチャベス陣営は相変わらず、チャベス派(チャビスタと呼ばれる)の集会への参加者を増やすためバスを動員し、参加者への報酬として金銭や食料を配っている。あるデモ参加者は「1回行くと200~300ボリーバル(正規レートで換算すると3700~5500円、ブラックマーケットのレートだとその半分ぐらい)もらえる。ただ1日中、炎天下にいなければならない」と話した。

また、これまでの選挙と同様、ベネズエラの公務員は「チャベスに投票しなければ解雇される」と脅されている。ただ誰がどちらに投票したのか本当に分かるのかは不明だ。それでも万が一の失業リスクを考えると、ベネズエラには多い公務員のそれなりの数がチャベスに投票する可能性は高いといえそうだ。

チャベス大統領は99年の就任以来、資源ナショナリズムを推進。ベネズエラ石油公社(PDVSA)を完全に支配し、オイルマネーをボリビアやキューバなどの反米国家に分配してきた。米国エネルギー情報局(EIA)によるとベネズエラの石油確認埋蔵量は世界6位。アジア経済研究所のレポートによれば、外資を追い出したベネズエラは新たな油井の掘削技術をもたないため、石油生産量は少しずつ落ちているという。

隣国を援助する半面、ベネズエラ国民の間では数年以上前から、大きな不満が徐々に高まっている。ベネズエラはインフレがひどく、たとえば6~7年前に1ボリーバル(当時はデノミネーションの前だったので正確には1000ボリーバル)で売られていたエンパナーダ(ラテンアメリカで一般的な大きなギョウザのような食べ物)が同じ店でいまや7~8ボリーバルに値上がりしている。公務員の給料も2~3倍に増えているが、生活は厳しさを増すばかり。治安の悪化も深刻だ。

大統領選に伴いアルコール類の販売は、5日午後6時から8日午後6時まで禁止。1週間ほど前から、インターネットを介して、ベネズエラなどの携帯電話にメールを送るモービルネットのサイトが「メンテナンス中」と表示され、使えない。(長光大慈)