ボリビアのコロナ緊急支援、「野党支持者」と「先住民」は食料をもらえない?!

サンタクルス県パンパグランデ市で食料を受けとる人たち

南米ボリビアで新型コロナウイルス対策への支援で差別が起きている。その差別とは、支援を受けとったかどうかが「住む市」によって大きく変わること。ボリビアでは、自分が住むところの市長が与党支持者であれば恩恵を受けられ、そうでなければ受けられない。これに加えて先住民に対する差別も根強い。驚くのは、こうした差別の構図がボリビア人のあいだで暗黙に了承されていることだ。

ボリビア東部のサンタクルス県は4月3日、新型コロナ対策の一環として、食べ物を県民へ配ることを目的とする「食料銀行」を設立した。食べ物やそれを買うお金は企業や個人から集める。

支援対象となるのは、18歳以上のサンタクルス県民だ。ただ条件があり、自営業者、年金を受給していない人、国からの支援が対象外となった妊婦に限る。支給規模は約10万人。配るのは、小麦粉や食用油など1人当たり16キログラム。13日分の食料に相当するという。

食料を受けとるには、4月17~20日にインターネットで事前申請する必要があった。インターネットにアクセスできない県民のためにサンタクルス県はフリーダイヤルを設置したり、電話がない人のために職員が巡回したりして申請を受け付けた。

ただ問題は、サンタクルス県のなかの市のトップが与党派か野党派かで、もらえる支援への格差が露骨に出ることだ。

バジェグランデ市の市長は、ボリビアの与党「デモクラタス」を支持する。人口約1万9000人のこの市には4月20日、小麦粉などの食料を詰めた袋が2000個届いた。県と市の職員が集会場で市民に配ったという。

対照的に、市長が野党に所属するパンパグランデ市(人口約1万人)に5月中旬までに届いた食料の袋は180個だけだ。パンパグランデの人口はバジェグランデのおよそ半分。だが受けとった物資の数は10分の1以下だった。パンパグランデ市役所の職員アルバレス・ラウルさんは「理不尽な仕打ち。だがこれがボリビアの政治だ。仕方ない」とこぼす。

食料銀行からの支援を市民が受けとれるように、パンパグランデ市役所は4月17~19日、申請窓口を市役所内に設置した。290人の申請を食料銀行のサイトに登録したが、「その分の食料は届かなかった」(アルバレスさん)という。

こうした格差は、支持する政党がどこかだけでなく、人種差別にも及ぶ。県職員が食料を配布するところに立ち会った、先住民とスペイン人の混血であるアルバレスさんは「職員は配る際、相手の顔を見て、先住民でない人だけに食料を渡していた。残念だった」と話す。

サンタクルス県は、ボリビアの中でもスペイン系の子孫が多い地域だ。アンデス山脈を越えてサンタクルス県に移ってきた先住民に対する差別はいまだに根強い。サンタクルス県のスペイン系の人が先住民のことを「コージャ・デ・ミエルダ(クソの高山地帯住民)」と呼び、罵るのは日常茶飯事だ。