「途上国でこそ有機農業ビジネスを!」、ウガンダで挑戦する坂ノ途中社・宮下芙美子氏が講演

有機野菜を作るウガンダの生産者と坂ノ途中の宮下芙美子氏(左)有機野菜を作るウガンダの生産者と坂ノ途中の宮下芙美子氏(左)

農薬や化学肥料に頼らない農業の普及を目指し、日本とウガンダでビジネスする会社「坂ノ途中」(京都市南区)海外事業部の宮下芙美子氏が6月10日、JICA地球ひろば(東京・市ヶ谷)で開かれた「100年先も続く農業を目指して-株式会社坂ノ途中のとりくみ-(企業のCSR・BOPビジネス展示関連セミナー)」に登壇。「途上国でこそ有機農業を普及させるべき」と強調した。

坂ノ途中は2012年から東アフリカのウガンダで、ウガンダオーガニックプロジェクトを開始。2013年には、現地法人「坂ノ途中イーストアフリカ」を設立し、環境負荷の小さい農業の普及と、ウガンダ産の有機作物を日本へ輸出する事業を展開している。

■世界で死にゆく農地は「関東の2倍」

「途上国、特にアフリカでは乾燥が進む土地が多い。乾燥地で農薬を大量に使い続けると、土の中に住む生物の種類が減少し、短期間で土地が使用できなくなってしまう」と宮下氏は警鐘を鳴らす。同氏によれば、世界で使用不可となる土地は毎年およそ600万ヘクタール(関東地方の面積は320万ヘクタール)。日本の農地面積460万ヘクタールを超える。

世界の農薬・化学肥料の使用量は増加傾向にある。農業環境技術研究所のデータによると、1961年から2007年の46年間で、世界の窒素肥料の消費量は9.5倍増加した。また同じ期間で、世界のリン酸肥料の消費量は3.8倍増えているという。

■有機農業を普及させるカギは販路開拓

しかし、有機農業を実践するには生産の過程で農家に大きな負担がかかる。栽培自体に手間がかかるうえ、収穫量が、農薬を使用した作物に比べて不安定なため、買い手の安定確保が難しく、結果、せっかくの生産物が売れ残る場合があるからだ。

坂ノ途中は、有機作物の流通販路を構築することで、消費者と有機農家をつないでいる。有機作物が売れる仕組みをつくり、有機農業を継続できる環境を維持することが狙いだ。

「手間を掛けて育てた有機作物の価値を農家さんに実感してもらうことが大事。販売までしっかりサポートすることが重要だ」と宮下氏は指摘する。実際、有機農業をウガンダで普及させようと活動するNGOはたくさんある。にもかかわらず現地で有機農業が根付かないのは、そういった団体が知識や技術を広めることだけに重きを置いて、販路の開拓に取り組んでこなかったからだという。

ウガンダ産ゴマ・シアバターを日本で販売

坂ノ途中がウガンダで販売する野菜セット

坂ノ途中がウガンダで販売する野菜セット

現在、ウガンダオーガニックプロジェクトで取り扱う有機作物は、ゴマ、シアバター、バニラビーンズ、チアシード、トウガラシ、ハチミツの6品。このうち日本へ輸出・商品化しているのは、ゴマ、シアバター、バニラビーンズの3つだ。

また、2014年からは、ウガンダ国内における有機野菜の流通事業も開始。現地で、旬の野菜や珍しい野菜を盛り込んだ野菜セットを販売している。現地の農家が作る有機野菜の種類は、年間を通して20種類以上に上るという。

坂ノ途中がウガンダで販売する有機野菜は、農薬使用野菜の約1.5~2倍の値が付く。しかし、売れ行きは順調だ。野菜セットの購入者は、ウガンダ人中間富裕層のほか、国際機関やNGOに勤める在留外国人が多いという。

ウガンダの貧富の差は大きい。世界銀行が公表したデータによると、同国では2012年、上位20%の経済的に豊かな人たちが、所得または消費活動の50%以上を占めたという。「今後、提携する農家を増やすことによって、上から下への良いお金の流れを作れたら」と宮下氏は期待を込める。