マラウイの貧困地域に住む小学生の親、ボランティアで「我が子が使う教室」を建て始める!

教室建設の足がかりとして2020年5月、マラウイ南部のパロンベ県にある13の小学校で倉庫を建て終えた。完成した1つの倉庫の前で記念撮影する、建設作業に参加した小学生の保護者とCanDoの永岡代表理事(前列右)。永岡氏を含む日本人スタッフ3人は、新型コロナウイルスの影響で2020年4月に緊急帰国して以来、リモートでプロジェクトを進める

マラウイ南部のパロンベ県で、小学生の保護者がボランティアで教室を建てるプロジェクトを推し進める日本の国際協力NGOがある。東京・台東区に本部を置くアフリカ地域開発市民の会(CanDo)だ。先行プロジェクトで2020年5月までに倉庫を建て終えた13校から9校にしぼって、教室建設に乗り出したと先ごろ、オンラインで報告した。完成のめどは2023年2月だ。

8割の大人が小学校を出ていない

小学校の教室を建てるプロジェクトは2021年2月にスタートしたばかり。2年間の目標は、9校のうち2校に教室が2つ入る教室棟を、他の7校に教室を1つずつ建てることだ。いずれも教室は倉庫と同じくレンガ造り。

プロジェクトの資金は約3670万円。外務省NGO連携無償資金協力(N連)から得る。

建設作業の主体となるのは、9校それぞれの小学校に子どもを通わせる保護者だ。極貧困が人口の41.7%を占めるパロンベ県は、初等教育(マラウイの小学校は8年)を終えていない大人の割合が84%と国内で最も高い。

教室建設を保護者に任せる理由を、CanDoの永岡宏昌代表理事はこう説明する。

「図面通りに建設作業を進めるなら、もちろんブロック工や大工のほうが早く完成する。でも子どもは、自分のために働く親の姿を見ているはず。床や壁に鉄筋コンクリートを入れないなど、誰かが手を抜いたときに無視できないと思う」

永岡氏によると、小学生の保護者は、自分たちの手で教室を建てたいと意欲的。そこでCanDoが倉庫建設のときから力を入れるのが、保護者の中から、建設作業を率いるリーダーを育てることだ 。人数は1校につき最大50人。リーダーの数が10~20人のような学校は追加でつのるという。

リーダーについて永岡氏は「意欲さえあれば誰でもなれる。男性でも女性でも、読み書きの能力が劣っていても、体に障害があっても」と話す。

リーダーはまず、週1回3時間(全7回)の研修を座学で受ける。目的は、大まかな建物の構造や完成までの工程、木材やセメントの保管方法を把握させること。道具についても、メジャーや水平器・垂直器(物の地面に対する角度を測る)を使う意味を理解してもらう。教えるのは、マラウイの大学や職業訓練校で働く、建築学が専門の教員5人だ。

座学研修のあとは、5人の教員に加えて7人の大工やブロック工が担当する実践研修に移る。セメントを流す、レンガを積むなどの各工程に沿って、道具の使い方を中心に学ぶ。プロの大工らを支える「補助職人」のレベルに達することを目指すという。

報酬と昼食は出さない

倉庫や教室の材料に使う土壌安定化レンガ(SSB)も保護者の手作りだ。セメントと土砂を1対20の割合で混ぜた粘土に水を毎日かけることで、セメントに化学反応が起きて硬くなる。強度や密度は、マラウイ大学工学部の検査で安全基準をパス。保護者はCanDoが導入したSSB製作機で、粘土をレンガの形に次々と押し出していく。

レンガづくりの段階から、保護者は全員ボランティアだ。朝8時か午後2時から始まる1日3~4時間の作業に報酬はない。たとえ作業が終日になっても、CanDoが昼食や飲み物を用意することもない。そのため、教室を建てる小学校やそこで働く教師、また作業に参加する保護者がそれぞれ食材を持ち寄って、昼食をつくるという。

手当てを出さない理由を永岡氏は「お金やご飯がもらえると思って、それ目当てで参加してほしくはない。親が『子どものため』を思って教室を建てることに価値をおきたい」と説明する。

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