パレスチナ自治区ガザ地区で活動する国際協力NGOパルシックは5月20日、空爆に怯えるガザの人たちの状況を伝える緊急セミナーを開催した。オンラインで登壇した同団体のヨルダン川西岸事務所の橋村さんは「イスラエルは空爆前に警告しているというが、それが届くのは2分前。ガザの人たちは空爆を恐れて夜も眠れない」と語った。5月20日に停戦が合意されたものの、ロイター通信によると、ガザ地区では空爆により子ども65人を含む232人がこれまでに死亡したという。
無人爆撃機の音が一晩中響く
パルシック・ガザ事務所のスタッフ、シャーディさんはビデオメッセージで、ガザでは空爆で建物や道などのインフラが破壊されていると報告した。電気が使えるのは1日3~4時間。水と電気が完全に止った地域もあるという。
車で移動すると空爆の標的になることから、移動は歩きに制限される。シャーディさんは食料品を買いに行く時だけ歩いて外出し、それ以外は家にこもっているという。
「本当だったら今は、ラマダン(断食月)明けのお祭り(イード・アルフィトル)。子どもたちに服を買ったりして祝いたかった。でも空爆が激しく(離れ離れになった妻子と)一緒に祝えない」とシャーディさんは悲しむ。
ガザ地区に住むほかの現地スタッフは「深夜ずっと、イスラエルの無人爆撃機の飛行音が聞こえる。ハエが頭に群がるように。(イスラエルは連絡なく空爆することもあるので)怖くて眠れない。もうたくさんだ」と話している。
橋村さんも「イスラエル政府は、ビルを空爆する前に警告していると言うが、それがパレスチナ側に届くのは空爆の2分前ほど。それから(住居者や近隣住民に)連絡しても間に合わない人もいるのでは」と理不尽な空爆の実態を語る。
ガザ事務所のスタッフであるサハルさんは、セミナーに参加する日本人に向けてボイスメッセージを送った。それによると、サハルさんは、空爆から避難してきた母と妹、20人ほどの甥と姪をかくまっているという。子どもたちは空爆の恐怖から叫んだり泣き出してしまう。サハルさんは、子どもたちと歌を歌ったり、かくれんぼをして空爆の恐怖を紛らわせたり、話を聞かせて慰めたりする。
「こんな悲しいニュースを伝えることになってしまい申し訳ない。ただこれが私たちの現実」と語るサハルさん。その声の後ろでは空爆の爆発音が鳴った。