現在40歳の武内さん。新型コロナウイルスの影響が落ち着き、移動できるようになったらイタリアに行く予定
「38年間会っていない父に会いたい。そのプロセスを映画にする」。こう話すのは、日本人とカメルーン人の血を引く黒人ハーフ芸人ぶらっくさむらいだ。見た目のせいで人種差別を経験してきた彼は「僕を見て、人種について考えるきっかけになれば」とお笑いなどエンタメを通して自身の存在をアピールしてきた。今回の映画も表現の一つ。映画の製作費となる100万円を8月9日までにクラウドファンディングで集める。
ぶらっくさむらいの本名は武内剛さん(40歳)。シングルマザーのもと、名古屋市で生まれ育った。カメルーン人の父とは2歳のときにイタリアで会ったのが最後だ。
父に会いたいと思ったきっかけは新型コロナウイルスの感染拡大だ。「新型コロナの影響が大きいイタリアに今もいるとされる父の安否が心配になった」(武内さん)。生きていたら68歳。会いに行かなければと考えたと、一連の流れをドキュメンタリー映画にすることを思いついた。
「映画」という方法を考えたのは、武内さんがお笑いで黒人をテーマにしたネタを作ってきたからだ。芸人として、ハーフや黒人のあるあるを歌にしてきた。これまでアメトーークやエンタの神様に出演。また自身のユーチューブチャンネルでは、何度も職務質問された話を「職質トーーク」と題して話すなど、自身の経験からできたネタや歌を投稿している。
武内さんが黒人をネタにしてきたのは、日本で生まれてから自分が人種差別を経験したためだ。高校を卒業した後は建設会社で働いたが、「日本人に見えない」という理由で現場に入るのを断られたという。アルバイトの面接も見た目のせいで何度も落ちた。「このころは一番の絶望を感じていた」と武内さんは振り返る。
1 2