カンボジアの環境活動家6人が不当逮捕されていた、アムネスティ「すぐに釈放を」

カンボジア沿岸地域で採掘された大量の砂。砂を採る際の森林伐採で、川の沿岸部の地形は崩壊。マングローブや魚の数が減る。生態系のバランスが狂うので、近隣の住民は生計を立てられなくなるという(©Mother Nature Cambodia)

「環境保護は正しいことなのに逮捕はおかしい」。こう訴えるのは、カンボジアの環境保護団体マザー・ネイチャー・カンボジア(MNC)の共同創設者のアレハンドロ・ダビットソンさんだ。国際人権NGOアムネスティ・インターナショナル日本がこのほど開いたオンラインイベントに登壇し、MNCのカンボジア人メンバー6人が不当に捕まったと明かした。アムネスティは、6人の釈放を求める署名活動を9月末まで実施中だ。

有罪なら最長で懲役10年

6人のうち3人が捕まったのは2020年9月。首都プノンペンにあるボンタモク湖の民営化に反対するデモ行進を計画した直後だったという。3人の罪は「重罪を犯すことや社会秩序を乱すことの扇動」。2人は懲役18カ月、1人は20カ月の刑に科せられた。

残る3人は2021年6月、「陰謀」と「国王の侮辱」の罪で捕まった。3人は東南アジア最大の湖トンレサップ湖で、下水による水質汚染の状況を調べているところだったという。判決は9月10日の段階でまだ出ていない。もし有罪になれば、最長で懲役10年だ。

ダビットソンさんによれば、6人とはおよそ半年間、連絡が途絶えたまま。「家族や弁護士はもちろん、国連が派遣する調査員も接触が不可能。(6人が)獄中でどうなっているのか全くわからない。新型コロナにかかっているかもしれない」(ダビットソンさん)

実は、ダビットソンさん自身も弾圧を受けた被害者だ。2003年から12年間、カンボジアに住んで環境保護を訴えてきたため、2015年にスペインへの帰国を余儀なくされた。2021年5月にはカンボジアで「扇動と社会不安を引き起こした」として有罪に。裁判への出席を訴えたものの、カンボジアへの入国ビザを何度も拒否され、欠席裁判になったという。

NGO登録も取り消し

ダビットソンさんは「カンボジア政府や軍が優先するのは、民間企業の利益。環境や人権は守ろうとしない」と話す。MNCをはじめとする環境保護団体への弾圧は、2018年の国民議会(下院)選挙の前後からだという。内務省はMNCを「社会に混乱を引き起こす違法な存在」と見なし、NGO登録を取り消したほどだ。

それでもMNCは、政府に果敢に立ち向かってきた。力を入れる活動のひとつが、カンボジア沿岸地域の砂の採掘と輸出をめぐる問題。2016年には、沿岸地域で採った砂の輸出を全面的に禁止させたという。

大量に砂を採るデメリットは、環境と人間のどちらにもある。採掘する際に森林を伐採することで川の沿岸部の地形が崩壊。マングローブや川にすむ魚の数が減る。ダビットソンさんは「生態系のバランスが狂うことで、漁師をはじめとする近隣住民は生計を立てられなくなる」と話す。

砂のほとんどが輸出向けだ。ダビットソンさんによると、98%は民間企業が輸出目的で大規模に採掘したもの。残りの2%は、川の沿岸地域の住民が、セメントに混ぜるために採るものだ。国内で沿岸部の砂を使う場合、採る量と場所を規制するガイドラインがあるという。

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