【キベラスラムで闘う人たち⑤】ナイロビのアーティスト集団「アート360」、コロナの感染予防を壁画で訴え!

国際平和デーでアート360が描いたミューラル「ア・チョイス・フォー・ピース」。南スーダンなどで平和構築活動をするデファイヘイトナウが必要な資金を出した

カラフルなペイントに力強いメッセージ。「ミューラル」と呼ばれる壁画を描き、社会問題を訴えるのが、ケニア・ナイロビのキベラスラムにある地域社会組織アート360だ。アート360はこれまで20カ所以上の壁やコンテナにミューラルを制作。新型コロナウイルスを扱ったミューラルでは「コロナは自分たちでコントロールできる」というメッセージを発信し、手洗いやマスクの着用を訴える。(第1回第2回第3回第4回

ラスタカラーで訴え!

赤、黄色、緑。女の子に手渡されるカラフルなラグビーボール。そこには、平和、愛、団結といったポジティブな言葉だけでなく、暴力、憎しみといった言葉も書かれている。女の子はどのボールを選ぼうか悩んでいる。

これは、2020年9月21日の国際平和デーにアート360が描いたミューラルだ。タイトルは「ア・チョイス・フォー・ピース」(平和のための選択)。悩む女の子を通して「平和のために正しい選択をしよう」というメッセージを伝える。

こうしたミューラルをアート360はキベラスラムにある壁やコンテナ、水タンクに描き、紛争や環境破壊といった社会問題を人々に訴える。

アート360を立ち上げたのは、自身もアーティストであるフェイス・アティエノさん。現在、17人のアーティストと共同でミューラルを制作する。

ひと目でわかる感染対策!

アート360は新型コロナウイルスの予防啓発のミューラルも手がける。そのひとつが「ホールドアップ」と呼ばれる作品だ。ホールドアップでは、地球に襲い掛かろうとする新型コロナウイルスの化け物を、ナースが鎖で捕まえている。

アート360のコミュニケーション担当のカルビンス・オチエンさんはこの作品についてこう語る。

「ホールドアップを作った2020年の5月、人々はコロナがどんなものかわからず、怯えていた。このミューラルには『しっかりと感染予防すればコロナは怖くない』というメッセージが込められている」

アート360はまた、具体的な予防方法を伝えるためにキベラのサラゴンべ区の高校の壁に住民の足であるマタトゥ(ミニバス)とボダボダ(バイクタクシー)を描いた。

マタトゥに乗る客はみんなマスクをし、間隔を空けて待っている。コンダクター(バス代を集金する人)はひとりひとりの手にサニタイザーをかける。ボダボダに乗る客はドライバーに触らないように手を後ろで組んでいる。

「このミューラルを見れば感染予防が一目瞭然」(オチエンさん)

ミューラルの新型コロナの啓発活動が評価され、アティエノさんは2021年6月、国際人権団体コンサーン・ワールドワイドから「ウーマン・オブ・コンサーン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。

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