ワクチン接種の完了率が0.4%のスーダン、「打つと不妊になる」との噂が影響?

ロシナンテスが送った物資を各家庭に配る村人(スーダンの北コルドファン州)。写真はロシナンテス提供

「スーダンでは新型コロナのワクチンを2回完了した人は8月18日の時点で0.4%。接種率が低い理由のひとつに考えられるのは、ワクチンに関する噂が広がっていること」。こう話すのは、認定NPO法人ロシナンテスのスーダン事務所の岩吹綾子さんだ。同団体の活動報告会に先ごろ登壇した。

噂の内容は、不妊になるなど重大な副作用が将来出るというもの。岩吹さんは「スーダンは噂話が広まりやすい土地柄。コロナワクチンについても接種をためらう噂が広がり、接種したくない人が増えたのではないか」と分析する。

こうした状況を危惧する保健省は、テレビやラジオ、インターネットなどを通じて国民にワクチンを接種するよう促している。スーダンの社会で影響力をもつイスラム教など宗教の指導者や地域のリーダーに対しても、ワクチンを早急に打つよう市民に働きかけるよう要請した。具体的には「噂話を信じないで、信頼のおける情報を入手しよう」「感染拡大を防ぐために、ワクチン接種が必要だ」といった内容を伝えることだ。

宗教指導者らに協力を要請する意図について岩吹さんは「スーダン人は宗教指導者や地元のリーダーを信頼している。集団礼拝のときに伝えれば、テレビやラジオ、インターネットなどへのアクセスが困難な高齢者や生活困窮者にも伝わる可能性が高まる」と説明する。

岩吹さんはまた、スーダンではPCR検査を受ける数が少ないことも課題に挙げる。「(保健省が発表したなかで最も新しい)7月15日のデータでは1日582件。スーダンの人口は日本の約3分の1だが、PCR検査数では日本の約170分の1だ」と話す。

世界各国の統計資料を掲載するワールドメーターによると、スーダンの新型コロナ感染者は9月2日時点で3万7715人。だが「PCR検査数が少ないため、感染状況が正確に把握できていない」と岩吹さんは指摘する。

スーダンは新型コロナの死亡率が7.5%と、世界全体の致死率である2.1%を大きく上回る。致死率が高い原因について岩吹さんは「PCR検査数が少ないため、軽症者を拾えていない可能性もある」とみる。

岩吹さんはさらに、スーダン中央部の北コルドファン州でロシナンテスが実施する新型コロナ対策の支援活動についても言及。ロシナンテスのスタッフが「せっけんを使って40秒手洗いする」「密集を避ける」などの予防方法を車で村々を回って伝え、その際にせっけんやハンドサニタイザー、フェイスマスクも配ったという。

スーダン北コルドファン州でロシナンテスは新型コロナの予防方法を車でアナウンスし、村人に伝える(写真提供:ロシナンテス)

スーダン北コルドファン州でロシナンテスは新型コロナの予防方法を車でアナウンスし、村人に伝える(写真提供:ロシナンテス)