学校に通えない貧しい子どもを歓迎します! インド・ブッダガヤ郊外に日本人が経営する“学校”があった

インド・ブッダガヤ郊外のスジャータ村に村越友祐さん(左の男性)が建てた学校

インド北東部のビハール州スジャータ村(ブッダガヤ郊外)に、日本人が運営する貧困層の子どものための学校がある。2017年にこの学校をオープンさせた任意団体「笑顔の先にある世界」の村越友祐代表(33歳)は「この学校を通じて、地域の人たちが貧困から抜け出すための教育機会を提供している」と話す。ビハール州はインドでも有数の貧しいエリアのひとつだ。

全校児童の数はおよそ70人(3クラス)。経済的、社会身分的(カースト)な理由で満足のいく教育を受けることが難しい小学校低学年程度の子どもたちが通う。授業料は無料だ。

この学校の特徴は、朝から夕方まで授業を受けなくてもいいことだ。1回45分の授業を2コマぐらいとるだけ。この学校に通う子どもたちは家庭の貧しさに加えて、親の仕事を手伝う必要があるからだ。

科目は、国語(ヒンディー語)、算数、理科、社会の4つ。授業のなかで教師がとりわけ意識するのは、子どもたちに自分の頭でしっかり考えさせること。新しいことを習う際も、教師はいきなり正解を教えない。植物の仕組みについて学ぶ授業の場合、まずは根っこの形を想像させるという。

農民が騙されないように

村越さんがこの学校を立ち上げようと思ったのは、スジャータ村の人たちが十分な学力をもたないから、日常生活で不利益を被ると気づいたからだ。

「スジャータ村には農民も多く住んでいる。キャベツやトマトなどの野菜を業者に売る際、騙されて安く買い取られてしまうのは日常茶飯事。計算が満足にできないからだ」と村越さんは説明する。

この学校を開校して5年。教育の成果はすでに表れた。

収穫した野菜を農民が売ろうとしたときのことだ。単価と個数を掛け合わした金額とは異なる安い金額を取引業者が提示してきた。そのとき子どもから「あれ? 金額が違うよ」と声がかかったという。

この話を聞いた村越さんは「まさに当初の目的が達成された瞬間」と喜ぶ。このエピソードが口コミで広まり、学校への入学希望者が増加。以前は20人だった生徒数が、今ではその3倍を超える70人に増えた。いまや席数が足りない状況だという。

ゲストハウスを開業へ

村越さんは、この学校の規模を拡大する計画を温めている。だが児童の受け入れ数を増やすにも運営費が足りないという問題がある。

学校の運営費はこれまで、クラウドファンディング(CF)にほぼ100%頼ってきた。これまでの5年間でCFを3回実施し、各回30万~40万円を集めてきた。ただCFを永久的に継続するのは難しいのが現実だ。

そこで村越さんが思いついたアイデアが、学校のすぐそばにゲストハウスを開業すること。学校のあるブッダガヤは幸い、仏教の聖地のひとつだ。コロナ禍がなければ、世界中から観光客がやってくる。「学校の運営で必要となる教師の給料などをゲストハウスの収益でまかないたい」と村越さんは青写真を描く。

建設工事はすでにスタート済み。コロナ禍でいまは中断中だが、数年以内のオープンを目指す。

このゲストハウスでは、現地の食材を使った料理を出すレストランを併設する計画。村越さんは目下、キャベツ、トマト、ジャガイモ、コメ、唐辛子などを無農薬で作る複数の農家と農作物を卸してもらうよう交渉中だ。

村越さんは「将来は、成長した子どもたちをゲストハウスのスタッフとして雇いたい」と話す。

授業を受ける児童たち

授業を受ける児童たち