世界銀行は5月11日、2022年の低・中所得国への送金額が前年比4.2%増の6300億ドル(約79兆8886億円)に達するとの予測を発表した。これは、2021年に前年比8.6%増となった回復傾向が続く形。世銀によると、欧州・中央アジアで最大の受取国ウクライナへの送金額は2022年に20%以上増える見込みだ。
2021年トップはグアテマラ
海外からの送金額を地域別によると、2022年に最も増えそうなのはラテンアメリカ・カリブ海(9.1%増)だ。
ただ前年(2021年)の伸び率25.3%(送金額は1310億ドル=約16兆6024億円)からは鈍化しそうだ。2021年の伸び率を国別でみると、グアテマラが35%でトップ。以下、エクアドル(31%)、ホンジュラス(29%)、エルサルバドル(26%)、ドミニカ共和国(26%)、メキシコ(25%)、コロンビア(24%)、ハイチ(21%)、ニカラグア(16%)が続いた。2桁の伸びを示したのは9カ国にのぼった。
これ以外の地域で海外からの送金額が2022年に増えると世銀が予測するのは、サブサハラ(サハラ砂漠以南)アフリカ、中東・北アフリカ(MENA)、東アジア・大洋州(中国を除く)、南アジアの4つの地域。2021年と比べて各地域の送金額と伸び率は、サブサハラ490億ドル(約6兆2100億円)から7.1%、MENA610億ドル(約7兆7309億円)から6.0%、東アジア・大洋州1570億ドル(約19兆8976億円)から4.4%、南アジア1330億ドル(約16兆8560億円)から3.8%になる見通しだ。
対照的に海外からの送金額が2022年に減少する可能性があるのは、欧州・中央アジア。過去最高額を記録した2021年の740億ドル(約9兆3786億円)から1.6%減だ。
送金コストの高さが課題
欧州・中央アジア諸国のうち、海外からの送金額の伸びが20%以上と世銀が予測するのが、2月24日にロシアから侵攻を受けたウクライナだ。2021年は、ウクライナ人が多く働く隣国ポーランドからだけで182億ドル(2兆3066億円)の送金があった。
世銀によると、海外からウクライナへ送金する際のコストは高いという。国別ではチェコからの送金コストが送金額の7.1%で最も高く、以下、ドイツ6.5%、ポーランド5.9%、米国5.2%の順。
世銀社会的保護・雇用グローバルプラクティスのディリップ・ラーサ主任エコノミストは「送金コストを2%引き下げられれば、低・中所得国出身の移民が送金する際に節約できる金額は年間120億ドル(約1兆5208億円)にもなる。ウクライナからの移民・難民だと年間4億ドル(約507億円)」と効果の大きさを試算する。