「悪夢は日本企業から始まった」、エクアドルで鉱山開発による環境破壊と人権侵害が深刻化

「日本企業の鉱山試掘が、20年にわたる河川の汚染と人権侵害をエクアドルにもたらした。住民の苦しみと日本人の生活の豊かさは無関係ではない」

4月12日、京都市中京区の堺町画廊で、「エクアドル報告会 鉱山開発はいらない!!森と大地と共に生き、抵抗する住民たち」が開催された。南米の環境問題に取り組むNGOなどで組織される「インタグの鉱山開発を考える」実行委員会が主催。冒頭は、実行委員会の一井リツ子さんが伝えた、現地の環境団体DECOINの会長シルビア・キルンバンゴさんからのメッセージだ。

南米エクアドルの北西部に位置するインタグ地域では、1991年に始まった試掘作業が原因で、20数年にわたって河川汚染が続く。また、エクアドルのエナミ社とチリのコデルコ社の両国営企業が強行しようとする鉱山開発により、更なる環境汚染が懸念される。原鉱石から採れる銅は採掘量のわずか0.6~0.7%、太陽光電池などの材料となるモリブデンは0.03%で、残りはほとんど有害物質となり環境を汚染する。現地では、ピューマやメガネグマといった絶滅危惧種が生息する原生林の伐採や、河川の安全基準の100倍を超える鉛、銅などによる水質・土壌汚染が予想される。

インタグ地域の鉱山開発は、1991年に国際協力機構(JICA)の委託を受けた三菱マテリアルが行った試掘に端を発する。地元住民の反対運動により三菱マテリアルは撤退したが、2004年にカナダのアセンダン・コッパー社が開発を引き継ぎ、現在はエクアドル・チリ両国の2つの国営企業が合弁事業として続ける。インタグ地域には226万トン以上の銅が眠っているといわれ、これは日本の年間使用量120万トンの約2倍だ。

鉱山開発による問題は環境汚染だけではない。エクアドル・チリ両国営企業が11年に合意した探鉱協定で開発の決まったフニン村では、鉱山開発に反対するハビエル・ラミレス村長(当時)が、14年4月に反逆罪という不当な理由で逮捕された。その翌月には警官隊に伴われた鉱山公社職員が予備調査を強行。また、ラミレスさんの弟にも同様に逮捕状が出ている。15年2月に釈放されたラミレスさんは「私たちが生きる大地と村人の人権を守るために、戦いはまだまだ続く」と述べた。

一井さんによると、エクアドル国内では、政府の情報統制により、環境破壊についてはあまり認知されていない。また、地元の反対運動は政府に妨害を受けており、問題解決のためには国際社会の関心を得る必要があるという。「日本はチリからも鉱物資源を多く輸入している。インタグ地域の環境破壊について、私たちも日本人としての責任を考えていく必要がある」と、一井さんは報告を締めくくった。