- 2023-01-16
- アジア
タイからミャンマーへの半分超が密輸入、貿易商「手数料はミャンマー国軍に流れている」
輸出額がコロナ禍の前に戻ったタイとミャンマーの国境貿易。この半分以上は密輸入だといわれる。タイ西部の国境の町、メーソットで家具の貿易商を営むミャンマー人のアコさんは「(ミャンマー側で徴収される)密輸入の手数料がミャンマー国軍の下部組織である国境警備隊(BGF)のもとに流れている」と危惧する。
軍人に金を払う
大型クレーンが大量のセメント袋を渡し船に載せていく。ここはタイとミャンマーの国境を流れるモエイ川にあるゲート13と呼ばれる船着場。渡し船がタイからミャンマーへと積荷を運んでいく。川岸の狭いスペースには、何台もの大型トラックが列を作って停車している。
コロナ禍と2021年2月に起きたミャンマーの軍事クーデターの影響で、ミャンマー・タイ国境の人の行き来はいまだに禁止されたままだ。だが2国間の国境貿易はここにきて再び活発になってきた。2021年10月からの1年間のタイからミャンマーへの輸出額は約29億ドル(約4070億円)。これはコロナ禍の前とほぼ同じだ。
だがこの数字はタイのメーソット関税室が発表したもの。ミャンマーの関税局によるとタイからの輸入額は約13億ドル(約1820億円)。この16億ドル(約2250億円)の差がタイからミャンマーへの密輸入額だといわれる。
「ゲート(船で品物を輸送するモエイ川の船着場)のミャンマー側には税関はない。荷物が岸に着いたらそれをトラックに乗せ、銃を構えた軍人にお金を払う。それだけだ」
アコさんはミャンマー側の実態をこう語る。税関を通した貿易がされているのは現在、2019年に開通した第2タイ・ミャンマー友好橋だけ。それ以外の30以上のゲートでの取引はすべて密輸入になるという。
BGFは国軍とグルだ
税関がないにもかかわらず、ミャンマー側では男たちが堂々と船から積み荷を降ろしてはトラックに積んでいく。白昼堂々と行われるこの密輸入を管理するのがBGFだ。
BGFはミャンマー国軍の下部組織。カレン州の老舗の反政府武装組織「カレン民族同盟(KNU)」から離脱したカレン族の武装勢力で構成される。BGFは国境の警備を担当する名目で貿易商から手数料をとり、それを資金源としている。
BGFはこの違法ビジネスを国軍に認めてもらう代わりに、国軍側に立ってKNUと闘う。その手口はミャンマー国軍と何ら変わらない。村人を捕まえて、KNUの情報を聞き出すために拷問をする。ジャングルを動く場合は村人を人間の盾にし、村から離れる場合はそこに地雷を埋めていく。
タイ側にひっそりと暮らすミャンマーの避難民はこう言って下を向く。
「私たちの村から国軍とBGFを先日、KNUが追い払った。だが奴ら(国軍とBGF)は村や畑に地雷を埋めていった。安全が確保されるまで村には戻れない」