5月14日に投票日を迎えるタイの総選挙でダークホースと目されるのが、若者に人気の「前進党」だ。前進党は他の政党と一線を画し、これまでアンタッチャブルだった不敬罪の見直しなどを公約に掲げる。タイ北部のチェンマイにある前進党の選挙事務所は、若手の立候補者とスタッフで活気が漲っていた。(第1回はこちら)
支持率トップに肉薄!
チェンマイ市の中心部から車で北東へ15分ほど。車庫の付いたタウンハウスの一角に、オレンジ色の看板をつけた家がある。ここがチェンマイの前進党の選挙事務所だ。
壁が白く塗られた事務所の中には、政党カラーであるオレンジ色の選挙グッズが並ぶ。公約を書いた立て看板、チェンマイ県の地図、マスコットキャラクターなどだ。
前進党は、前回(2019年)の総選挙で下院の81議席をとって第3の勢力となった新未来党の後継政党だ。軍政を批判し、民主的な憲法への改正を公約に掲げる。最も革新的な政党だ。
支持率はタクシン派の最大野党「タイ貢献党」に続いて第2位。タイの国立開発行政研究院(NIDA)が4月末に実施した最新の世論調査では、タイ貢献党との差が2.6ポイントに縮まった。勢いは増すばかりだ。
本物の民主主義を作る
タイ北部のチェンマイにある前進党の選挙事務所。ここに2人の下院議員候補がいた。
ひとりはチェンマイ県の第4小選挙区から出馬するプティタ・チャイアヌンさん(35)だ。バンコクのデモに参加するなど、もともとは活発な活動家。当選した暁には議会からタイの民主化を目指す。
もうひとりはチャワリット・ラオハウドンファンさん(36)。2019年の総選挙では新未来党の候補者として、比例代表で当選した。今回は前進党の比例代表のリストに名を連ねる。
2人はこう話し始めた。
「タイで一番問題なのは、“憲法を超える権威”をバックに、軍と財閥が富を独占していること。一般のタイ人が弱い立場に追いやられている。この独占を打破して、国民が上に立つ本物の民主主義を作ることを前進党は目指している」
権威から承認された国軍は、2014年にクーデターで政権を奪って中央集権を進める一方、それに反対するデモを力で制圧した。軍政と関係の深い財閥は、国の資産を不正に利用し、タイの産業を独占していったといわれる。