シャンティ国際ボランティア会が東部の山岳地帯で運営する「コミュニティベースの教室」。民家の一画を利用する。読み聞かせには、日本を含む世界の名作やシャンティが独自に出版した絵本を使う(写真提供:シャンティ国際ボランティア会)
国際協力NGOシャンティ国際ボランティア会(SVA、本部:東京・新宿)アフガニスタン事務所でプロジェクトマネージャーを務めるムサウェルさん(仮名)は6月1日、同団体が主催したオンラインイベントに登壇し、「アフガニスタンではタリバンが2年前に復権してから、200万人の女子生徒が学校に通えなくなった」と話した。2001年に米国同時多発テロが起きた後に成立した旧政権下でも1200万人の児童が読み書きができなかったといわれる。
校舎の門が閉ざされた
イスラム主義勢力タリバンは20年ぶりに政権をとった2021年8月以降、女性の権利を著しく制限し始めた。女子生徒が中等教育(中学・高校)を受けることも禁止した。その結果250万人以上の生徒が現在も学校に通えていない。その8割(200万人)が女子だ。
学校に突然通えなくなり、精神的に追い詰められる女子生徒は少なくない。中学生のひとりは「いつ学校が再開されるのか」と考え続け、精神を病んだという。今は学校の絵を毎日描いたり、校舎の周りを歩いたりして、いたずらに時を過ごす。
3人の娘をもつムサウェルさんも「子どもから毎日、『いつ学校に通えるようになるの?』と聞かれる。だが『わからない』としか答えられない。それが本当に辛い」と苦しい胸の内を明かす。
教育が受けられず苦しむのは女子だけではない。男子生徒への影響も深刻だ。多くの女性教師が職を追われたため、授業が受けられなくなったからだ。「学校に行っても、名簿に名前を書いてすぐに家に帰る子も多い」とムサウェルさんは言う。