障がい児をもつケニアの母親に「フェルト作りの仕事」を! 協力隊OGが起業へ

フェルト雑貨の作り方を学ぶ研修で、洗った羊毛のごみをケニア人の母親たちと一緒に取り払っているところ。左から2人目が三関理沙さん

家庭の貧しさゆえに、障がいのある子どもが学校に通えない現状を変えようとケニアで奮闘する女性がいる。JICA海外協力隊員として同国で活動した経験をもつ三関理沙さん(37)だ。三関さんは4月に、障がい児をもつケニア人の母親が手作りするフェルト雑貨を日本で売る会社を立ち上げる予定。「障がいをもつ子どもの学費を母親たちが払えるようになれば」と見据える。

年内に60人を雇用

会社の名前は「Pamoja na Africa」(パモジャ・ナ・アフリカ)。ケニアの公用語であるスワヒリ語で「アフリカと一緒に」という意味だ。三関さんは「障がいのある子どもやその家族がコミュニティから孤立しないよう、手を引っ張るようなイメージで命名した」と話す。

商品作りの拠点とするのは、ケニアの首都ナイロビの東南にあるマチャコス県のマシー村。ナイロビからはバスで2時間、さらにバイクで30分ほどかかる場所だ。女性や若者に教育機会を提供する地元のNGOライト・オブ・ホープ・ユース・イニシアチブ・インターナショナルが運営する学校の一角を工房として借りる。このNGOは、三関さんの協力隊時代の同期隊員が活動していたところだ。

ここで作るのは、天然の羊毛フェルトを原料とするかばんやピアス、ルームシューズ、スマホケースなど。今は試作を重ねている。オンラインショップサイトのベイスなどで売る予定だ。三関さんは「羊毛の温かみを生かして、暮らしを豊かにできるようなものを作りたい」と言う。

商品の作り手として三関さんが雇うのは、障がい児をもつ母親だ。現段階では26人。「年内に60人を目指す。そのためには私だけでなく運営スタッフを増やさなければ」と三関さんは意気込む。

商品を作るのに必要な技術は、2023年12月から三関さんが自ら母親たちに教える。まずは3カ月かけて、刈り取ったばかりの羊毛をきれいに精製できるようになることを目指す。

「研修前の説明会では、『これは援助ではなくビジネス。だからまじめに働く人を求める』と伝えた。それでもみんな来てくれた。働きたくても働けなかった現実がよくわかった」(三関さん)

研修中も400ケニアシリング(約420円)の日当を支払う。三関さんは「無給では続かない。お母さんたちは研修に来ている間、日雇いの仕事もできない。1日400ケニアシリングあれば、家族にご飯を買って帰れる。研修の最後にある試験をクリアしたら、研修中の日当よりも高い給料を支払うことも伝えている」と言う。

研修に参加する母親のひとり(前列右)。夫が5年前に他界し、2人の息子と一緒に暮らす。3人の娘は結婚して家を出た。息子のひとりは知的障がいがあり、小学4年生までは近所の学校に通っていたが、学校生活についていけず中退。それ以来ずっと家にいる

研修に参加する母親のひとり(前列右)。夫が5年前に他界し、2人の息子と一緒に暮らす。3人の娘は結婚して家を出た。息子のひとりは知的障がいがあり、小学4年生までは近所の学校に通っていたが、学校生活についていけず中退。それ以来ずっと家にいる

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