【西サハラの声⑤】拘束・拷問・妻のレイプ被害、サハラーウィ人権活動家アリ・サレム・タメックさん「それでも希望を失わない」

サハラーウィの著名な人権活動家アリ・サレム・タメックさん。人権団体「サハラーウィ人権活動家集団 (CODESA) 」の代表を務める

「西サハラはサハラーウィ(西サハラの砂漠の民)の土地だ。正しいことを間違っているとは言えない」。こう話すのは、サハラーウィの著名な人権活動家であるアリ・サレム・タメックさん(50)。タメックさんは長い間、モロッコ政府から二級市民の扱いを受けるサハラーウィの権利回復を求めて活動してきた。だがモロッコ警察に幾度も逮捕され、服役した期間は合計で7年にも及ぶ。(連載「西サハラの声」第1回はこちら

アムネスティが支援

タメックさんは西サハラに近いモロッコ側の街アッサの生まれ。アッサの市役所で働き始めると同時にサハラーウィの人権を守る活動を開始した。

不当に拘束や起訴をされたり、刑務所に入れられたサハラーウィがいれば会いに行き、裁判があれば裁判所の前で抗議する。また「真実と公平フォーラム」と「サハラーウィ人権活動家集団 (CODESA) 」の2つの人権団体も設立。代表のひとりとして集会を定期的に開催したり、モロッコ当局によるサハラーウィに対する人権侵害のケースを収集、調査する。

モロッコが支配する西サハラに海外のメディアや人権団体は入れない。そうした中、タメックさんは国際人権団体とコミュニケーションをとり、弾圧されるサハラーウィの状況を世界に発信してきた。

タメックさんと国際人権団体とのつながりは深い。2002年に懲役2年の判決を受けた時は、アムネスティ・インターナショナルが「アリ・サレム・タメック受刑者を解放せよ」という国際キャンペーンを打ったほどだ。

刑務所内であわや殺傷

西サハラの人権侵害を表に出したくないモロッコ政府にとって、タメックさんの存在は迷惑だ。そのためこれまでさまざまな手段を使ってタメックさんを黙らせようとしてきた。

度重なる拉致、誘拐、拘束、拷問もそのひとつ。タメックさんは過去に6回、拘束・起訴され、合計7年も刑務所に入れられた。

「刑務所は集団墓地のようなところだ」

タメックさんがこう話すように、刑務所での生活は過酷を極めた。小さな部屋に数十人も押し込められ、食事の量はわずか。刑務官からは定期的に暴行を受け、辱められる。衛生環境も悪く、幾度も皮膚病や感染症にかかった。モロッコ政府の息のかかった受刑者にナイフで刺されかけたこともあったという。

刑務所での生活のせいか、タメックさんは慢性的な喘息、胃や腸の不調、アレルギーやリュウマチ などをわずらうようになる。これまでに2回、手術をした。

モロッコ警察から繰り返し拘束され、暴行を受けてきたタメックさん。身体中に傷あとが残る

モロッコ警察から繰り返し拘束され、暴行を受けてきたタメックさん。身体中に傷あとが残る

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