「ベネズエラのお父さんのことが心配」。こう語るのは、2人の子どもを抱えるシングルマザーのベネズエラ難民ウィルメイディス・ペニェさん(22歳)。コロンビアのメデジン郊外にあるベジョの路上でコーヒーなどを売る。経済破綻した母国ベネズエラのカラカス西部のルイスピネダから2020年に友人の援助を受けてベジョへ移ってきた。
兄が銃殺される
ルイスピネダで生まれ育ったペニェさん。2007年、5歳の時に両親が離婚して以来、母と4人のきょうだいと暮らしていた。別れた父から援助を受け、また母も働いてたが、生活は楽ではなかったという。
2012年、一家の大黒柱だった、きょうだいで一番上の兄(18歳)が恋愛関係のもつれで知人に銃殺された。
生活はさらに苦しくなった。母が毎日外で働いている間、家事はペニェさんら4人の子どもで協力した。一番上の姉は料理を作る。ペニェさんは掃除や洗濯を手伝った。ペニェさんは当時10歳だった。
赤ん坊を抱えて越境
ペニェさんは18歳のとき(2020年)、子どもを生んだ。高校生でありながらシングルマザーになった。
ベネズエラの経済状態はこのころますます悪化していく。同年のインフレ率は世界最悪の2355%。スーパーマーケットには食料が入荷されず、商品棚もガラガラ。食べ物を手に入れるのは難しかった。「高校を卒業しても仕事なんて見つかりそうもなかった」(ペネェさん)
母は2019年に、コロンビア北部沿岸のバランキージャにひとりで移り住んでいた(2023年にベジョに転居)。またペニェさんの地元の親友もすでにベジョで暮らしていた。親友に相談したところ「ウィルメイディス(ペニェさんのこと)もこっちに来たらいい」。
親友の一言で心を決めた。ルイスピネダから子どもとともにヒッチハイクしながら約1100キロメートル離れたベジョまで4日かけて来た。「夜もヒッチハイクした。治安の悪い地域もあって道中とても怖かった」
コロンビア側の国境の町ククタの国境検問所前の路上で一夜を明かした。「寒いし、お腹が減ってつらかった。食料はパンと水だけだったから」。検問所で警察に200ドル(約2万9000円)渡したが、それ以外は移動に金はかからなかったという。「警察に渡したお金は親友が事前に送ってくれていた」とペニェさんは語る。