ベナンの村のバイクタクシーの運転手は投資家だった!? 稼いだお金でタクシー運転手にステップアップ

愛車ボクサーにまたがるヌモビさん。粗悪な道を運転するが、驚くことにパンクはほとんどないとのこと

「車を買ってタクシードライバーになりたい」。そう語るのは、フランソワ・ヌモビさん(42)。ベナン南西部のクッフォ県トタ村で暮らすゼミジャン(バイクタクシー)のドライバーだ。より稼げるタクシードライバーになるための戦略として、18年前に農家からゼミジャンドライバーへ転職。稼いだお金を貯蓄に回すほか、不動産に積極的に投資する。

農家を辞めて収入10倍以上

18年前、ヌモビさんは農家だった。キャッサバ、トウモロコシ、ココヤシなどを育てていた。月収で6660CFAフラン(約1620円)。ベナンの平均月収は8万CFAフラン(約1万9540円)なので、ヌモビさんの収入は12分の1しかなかった。

主食の原料になるガリ(キャッサバの粉)は1キログラム当たり350CFAフラン(約85円)。ヌモビさんの月収では19キログラムのガリを買ったら終わりだ。ガリで主食のパッドを作ると60食分。それ以外に回すお金は残らない。苦しい生活から脱するため、より稼げるゼミジャンのドライバーへの転職を決めた。

ゼミジャンのドライバーとして働き始めたヌモビさん。月収は平均して10万CFAフラン(約2万4433円)に跳ね上がったという。農家時代の10倍以上だ。

ヌモビさんが働くのは日曜日以外の朝の7時から夕方7時まで。ただ待機時間も少なくない。1日の平均乗客数は30人ほど。利用目的は村のマルシェ(市場)での買い物や親せき・知り合いの家への訪問など近場の移動がメインだ。

ゼミジャンの乗車料金はトタ村の相場で1キロメートルあたり200CFAフラン(約48.8円)。ヌモビさんは1日平均6000CFAフラン(約1466円)を稼ぐという。

インド製バイクは低燃費

ベナンのガソリン価格は1リットル650CFAフラン(約158円)と安くない。ガソリン価格が高騰する中、ヌモビさんは「(少しでも多く)稼ぐためには燃費が重要」と強調する。

そんなヌモビさんが運転するのはインドのバイク「ボクサー」(メーカー:バジャジオート)だ。ガソリン1リットル当たりの燃費は42キロメートルと抜群。ボクサーは、ゼミジャンドライバー歴18年のヌモビさんにとって4代目のバイクだ。

「以前は中国製のサンヤ(メーカー:ビトラコ)に乗っていた。ボクサーより丈夫だけれど、燃費は1リットル35キロメートルと劣る。ボクサーのほうが圧倒的に経済的。車体の値段は中古で両方とも20万CFAフラン(約4万8860円)とだいたい同じだからボクサーの方が節約につながる」(ヌモビさん)

ガソリン代以外にメンテナンスもある。エンジンオイルやチェーンの交換などの費用もかさむ。エンジンオイルは1カ月に2回換えるという。

ヌモビさんが節約を強く意識するのは近い将来、車を買って、タクシードライバーになりたいからだ。

舗装されていないデコポコ道。トタ村には坂も多い

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