フォンコメ村で初めての女性シェフ(ブードゥー教の最高指導者)を務めるアケナジェ・アゾイヌ・メネさん(白い衣装を着た中央の女性)。ブードゥー教の儀式で村人と一緒に踊る
ベナン南西部のクッフォ県ドボ市フォンコメ村に、ブードゥー教の最高指導者(シェフ)を務める女性がいる。アケナジェ・アゾイヌ・メネさん(自称40歳)だ。彼女はこの村で初めての女性シェフ。ブードゥー教では女性のシェフは普通結婚できないとされているが、「私は神に結婚の許しを得た」と語る。
謎の瞬間移動に恐怖
メネさんは幼いころから、「シェフになるために生まれてきた」と村の占い師(ビジョン)に言われてきた。
ブードゥー教ではビジョンが発する言葉(占いの結果)は重い。メネさんがシェフになった理由も占いがかかわっている。
フォンコメ村の次のシェフはだれになるのか、とビジョンが占っていたとき、浮かび上がったのがメネさんだったという。だが彼女は一度、シェフになることを拒絶した。
「シェフになるには誰かを殺さなければいけないと聞いた。私は殺人を犯したくない」(メネさん)
ただ実際は人を殺す必要はなかった。ところがシェフになることを拒んだため、彼女は出産の際に不思議な体験をしたという。
「最初の息子(第一子)を産んだ直後に、その場所から私は消えてしまった。気付いたら、どこかの川の中にいた。だれかが私のことを見つけてくれたから村には戻れたけれど‥‥」
この出来事は2番目の息子を産んだときも起きたという。
謎の瞬間移動に恐怖を感じたメネさんはビジョンに占ってもらった。再び、「あなたはシェフになるべき」と告げられた。メネさんは自分の人生と2人の息子を守るためにシェフになると決意。それ以降、不思議な体験は起きていないと語る。
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