FAO、2015年の世界の穀物生産は楽観的見通しだが、食料不安地帯における懸念は残ったまま
本日公表された最新のFAO食料価格指数と穀物見通しと食料事情(季刊)の最新版によれば、世界の穀物生産は、今年25億2700万トンに達する見込みである。
これは、記録的レベルとなった2014年から1.1%低下したが、先月の推定よりは改善されている。
一方、6月の食料価格指数は5月に比べ0.9ポイント低下した。現在の指数は1年前に比べ21パーセント低下し、165.1ポイントとなった。これは、2009年9月以来の最低値である。
指数低下の原因は、6.6パーセント低下した砂糖価格及び4.1パーセント低下した乳製品価格によるものであり、それらの影響は、パームオイルと小麦の価格上昇を相殺して余りあるものであった。世界的な飼料需要、とりわけブラジル、中国および米国での需要の増加がトウモロコシを含む粗粒穀物の価格を押し上げている。
しかし、これらの世界的な価格の傾向と穀物生産の好ましい見通しの裏には、地域的な食料不安地帯の状況が隠されていると報告書は警告している。
世界の34か国、―そのうち28か国がアフリカ―は、多くの避難民を抱えており、外国からの食料支援を必要としていると、述べている。
アフリカにおける多様な懸念
2015年の生産見通しによれば、アフリカでは、昨年の高収量から落ち込み、中央、北アフリカを除くすべての地域で生産量が減少の予想である。
南部アフリカでは、総生産量は17パーセント減となる見込みであり、これは主として雨季における不規則な降雨量と、乾季の拡大が原因である。トウモロコシの総生産量は2060万トン-これは当該地域の穀物生産の大半を占めるのであるが-と予想され、高い生産量であった2014年から26パーセントの減少となる。
南アフリカのトウモロコシ生産量は、減産量の大半を占め1050万トンと予想され、昨年の高い生産量に対して30パーセントと著しく落ち込む見込みである。
2015年のザンビアとマラウイのトウモロコシの収穫は、2014年のそれぞれ21パーセントと26パーセント減と予想され、降雨不足がレソト、ナミビア、ボツワナ及びスワジランドといった輸入依存国のトウモロコシ生産に深刻な影響を及ぼしており、13%から43%の減産見込みである。
これらの傾向は、トウモロコシの生産高が半分にまで落ち込むことが予想されるジンバブエのような穀物不足となる隣国への輸出能力に影響を及ぼす。比較的低いレベルに留まった昨年に比べ、食料支援の必要な人々の数は増加する見込みである。
西アフリカでは、昨年の全般的に良好な生産が地域の食料安全保障への懸念を低減している。
最新の推計によれば、サヘル地域9か国の2014年の穀物総生産量は2100万トンで、過去5か年の平均に比べ約7パーセント高い値となっている。これは、マリ及びその他の沿岸諸国の生産が堅調なためである。
しかしながら、天候不順のため、サヘル地域の大部分、とりわけ西部の国々では生産量の低下が深刻である。それら地域での穀物生産は過去5か年平均に比べ、2014年は、カーボ・ベルテでは82パーセント、ガンビアでは28パーセント、ギニア・ビサウでは33パーセント、セネガルでは17パーセントの減少となる見込みである。チャド、モーリタニア及びニジェールのかなりの地域も深刻な状況である。
中部アフリカでは、中央アフリカ共和国の良好な天候にも関わらず、継続する政情不安が今シーズンの作柄に深刻な影響を及ぼすことが想定される。コンゴ民主共和国東部の紛争もまた懸念材料であると、報告書は記述している。
東部アフリカでは、3月の作付期当初からの遅れ気味かつ不規則な降雨が生産の見通しを暗いものにしている。
南スーダンの紛争地域では食料不安の状態が「警告」レベルにあると報告書は特筆しており、その地域において深刻な食料不安を抱える人の数は2015年初頭以来概ね2倍の460万人に達する見込みである。
よりよい見通しにも関わらず、近東は人道危機の拡大に直面
2015年の近東の穀物生産は、トルコでの18パーセントの増産が牽引して、昨年の干ばつの影響から回復が期待されている。しかしながら、報告書によれば、各地の紛争が農業に深刻な影響を及ぼし続けており、イラク、イエメン及びシリアでは人道危機の拡大に直面している。
とりわけイエメンは際立っており、食料不安を抱える1290万人のうちの約610万人が「緊急」フェーズ、680万人は「危機」フェーズにあり、昨年1年間で21パーセント増加した。
アジア-中国及びパキスタンで記録的な生産量、しかし、諸問題は根強く残る
アジアでは、中国とパキスタンの記録的な穀物生産が、主としてインドにおける低い小麦生産量といった他地域の生産量減少を相殺することが予想されている。
ネパールは地震の被害により食料生産の落ち込みがみられ、北朝鮮では、深刻な干ばつにより2015年穀物の減産が予想されている。