【協力隊deコロンビア(15)】カルタヘナで体験した「スリ」、地元の人が参加しない独立記念日の祭り

2012年のミスコロンビア候補たち。装飾されたトラックの荷台に乗り、各県の特色ある衣装でパレード

11月11日は、コロンビア・カルタヘナの独立記念日です。8回目の連載でも書きましたが、今年もカルタヘナでは11月3~13日、市内のいたるところでお祭りが開かれました。

注目は、同時に開催される2つのミスコンテストです。ひとつは、コロンビア一の美女を決める「ミスコロンビア」。もうひとつは、カルタヘナの低~中所得地域の出身者がエントリーする「ミス独立記念日」です。

これ以外にもイベントは盛りだくさん。私は、セントロ(旧市街)の近くで夕方から開かれたバジェナト(コロンビア・カリブ海地域発祥の音楽)のコンサートに行ってきました。

友人と私が陣取ったのは、柵のすぐ前の絶好の場所です。警官や警備員が周りにいたので、スリは大丈夫だろう、と私はそんなに強く警戒していませんでした。

ところが会場では、中年男性が暴れて警察に連れ出されたり、売り子と客がけんかしたり、白い泡で他人を攻撃しあったり、と会場は妙な空気に包まれていました。

数時間後、だれかが私の体を押してきました。最初は痴漢かなと思いましたが、ものすごく強く押してきます。するとひとりの男性が割り込んできました。「ここは私たちの場所だ」と抗議すると、なにか言い訳をぶつぶつつぶやきながら、さらに後ろの男性が押し続けます。

そのとき私は「んっ」と何か違和感を覚えました。かばんが引っ張られているような気がしたのです。でも暗くてよく見えません。とりあえずかばんを自分の前に引き戻しました。

いつの間にか私の周りにいた3人の男性は消えていました。ふとかばんを見ると、ナイフのようなもので2カ所切り裂かれていました。幸いなことに、何も盗られていませんでしたが、私は初めて、犯行の手口を実体験しました。

アフリカから昔連れられてこられた黒人奴隷に敬意を払って全身を黒くしている

アフリカから昔連れられてこられた黒人奴隷に敬意を払って全身を黒くしている

この期間中、他の友人は携帯やかばんを盗まれました。カルタヘナの独立記念日は、本来はめでたい日なのに、若者や貧しい人が泡や汚れた水を片手に近寄って来て、お金を要求したり、スリをします。泡や汚れた水を相手の顔にかけ、びっくりさせたすきに、持ち物を奪い取るというのが常套手段です。

カルタヘナの独立記念日は文字通り、カルタヘナの独立を祝う日です。ところが主人公であるべき地元の人の中には「外から来た人で混雑するから、旅行に出かける」人も少なくありません。カルタヘナの人たちがこの祭りを避ける理由を、私は身をもって体験しました。(藤早苗)

泡や小麦粉、ペンキ入りの水で汚し合う。車もこの通り真っ白

泡や小麦粉、ペンキ入りの水で汚し合う。車もこの通り真っ白