外国人技能訓練実習生に聞いた帰国後の夢

日本語の授業を受ける20代の若者たち

ミャンマーのヤンゴン。外国人技能実習生訓練学校を訪ねた。実習生の派遣先は日本の国内企業。中規模の企業が中心だ。日本語の授業前に男女8人の実習生に幾つかの質問をして、回答をもらった。

「3日後に島根県のパン工場に行く。そこで学んだことを生かして、ミャンマーに帰国したらパン屋をひらきたい」「来月愛媛県の鋳物工場に行く。そこで身に付ける技術を使って、帰国したらテクノロジー関連の仕事に就きたい」

幾つもの回答のうち、この2つだけに少し違和感があった。

日本の外国人技能実習制度に関わっているのは、公益財団法人国際研修協力機構だ。そこではこの制度に関して3つの目的を記している。要約すると次の通り。

1)技能実習生が、知識・技術・技能を習得することを目的とする

2)実習期間が終了して帰国したら、習得した技能等で母国に貢献する

3)日本国内実施実習機関にとっては、外国企業との関係強化・経営の国際化・社内の活性化・生産に貢献

違和感の正体は「習得した技術で母国に貢献する」という部分と、回答の微妙な齟齬だ。パン工場で習得する技能は、パンを作って売るという個人商店の業務とは少し違うし、鋳物工場で習得する技能は、おそらくテクノロジー関連業務ではないだろう。確かにパン工場や鋳物工場で身に付けた技術や経験は、母国の発展に貢献するだろう。ただし、ミャンマーで育った彼らが、日本の工場での具体的な生産過程を想像するのは難しいのだ。

授業内容は「報・連・相について」。「仕事が終わったら黙って待っていないで、自分から上司に報告すること」など、実践的だ

授業内容は「報・連・相について」。「仕事が終わったら黙って待っていないで、自分から上司に報告すること」など、実践的だ

訪問した技能実習生訓練学校は、人を育て、国を育てることに特段のこだわりを持っている。そのためだろう、3つの目的のうち、1と3に関する実習生の回答には違和感を覚えなかった。それでもどうしても生まれてしまう、わずかなギャップがあるのだ。物事は、なかなか理想通りにはいかない。