マニフェストを徹底比較! 各党の「国際協力」度合いは?

12月16日に投票日を迎える総選挙。「国際協力」について各党はどんなスタンスをとっているのか。開発メディアganasは、各党の選挙公約(マニフェスト)の中から、政府開発援助(ODA)に関係する記述を中心に抜き出し、まとめてみた。民主党と自民党の歯切れの悪さが際立つ結果となっている。

民主党

民主党は「政権公約」の中で5つの重点政策を挙げた。そのひとつが「外交・安全保障」。その一部に位置づける国際協力についての記述は以下の通り。

1)国力に相応しい国際貢献を積極的に展開し、日本のプレゼンスを高める

2)国連の平和維持(PKO)活動や災害派遣活動に積極的に参加する

3)ソマリア沖での海賊対処行動を継続する

4)国連改革をすすめ、安保理常任理事国入りをめざす

5)ODAの活用を通じて、貧困削減、平和構築、民主化支援などをすすめ、途上国の発展に寄与する

6)ポスト・ミレニアム開発目標(MDGs)の策定に主導的役割を果たす

7)アフリカ諸国との関係強化を含め、資源外交を強化する

これ以外では下記の内容も盛り込んだ。

・官民一体でインフラ輸出を推進するなど、経済外交を戦略的に展開する

・訪日外国人旅行客1800万人(2016年)を実現するため、オールジャパンの訪日プロモーション、ビザ発給要件の緩和、エコツーリズムなど旅行者のニーズに即した観光の提供などをすすめる

・国内外のイベント開催、クールジャパン番組の海外放送などにより、日本の映像、ファッション、伝統文化、食などの発信を高め、クールジャパン関連の市場規模を9兆3000億円(2016年度)に拡大する

自民党

自民党は「政権公約」の中で、経済、教育、外交、暮らしの4つの再生を掲げる。

外交再生の中では「中長期的な外交・安全保障戦略に基づくODAの重点化・効率化と有効活用」をはじめ、「貧困撲滅や難民救済など『人間の安全保障』の積極的推進」、「国際貢献をさらに進めるために、国際平和協力一般法の制定」を盛り込んだ。

経済再生の中では、クールジャパン(コンテンツ・衣食住)の国際展開、インフラシステムの輸出、グローバル人材の育成、教育機関の国際化を進めるとしている。

教育再生では、日本人の海外留学の大幅増や、優秀な留学生を戦略的に獲得(当面の目標は20万人)するため、国費留学生を拡充するなど、積極的に支援する。

公明党

公明党は、今回の「重点政策(マニフェスト)」で7つの再建分野を掲げた。そのひとつが「外交」。この中で、「人間の安全保障」分野で世界に貢献するとうたっている。詳細は下記の通り。

1)「人間の安全保障」分野へ予算を重点配分

経済的貧困、飢餓、麻薬、感染症から人間を守ることや、地球の環境保全、女性の地位向上、人身取引根絶、 安全な水の供給、防災など「人間の安全保障」分野にODAの20%を優先配分する

2)海外で活動するNGO支援

ODA予算の5%を海外で活動する日本のNGOへ還元する

3)国連「平和構築委員会」活動への積極的参加

「人間の安全保障」「平和の定着構想」の推進のため、国連「平和構築委員会」活動への日本の積極的参加を促す。平和の定着構想とは、紛争後の国に対して、紛争状態に後戻りしないような支援・取り組みを実施し、平和と安定の国づくりを目指すこと

4)対人地雷被害国支援

対人地雷の探知・除去をさらに進める。機材開発、人材育成、財政支援を実施するとともに、犠牲者支援や開発援助を行う

共産党

共産党は「総選挙政策」を40の分野で整理したが、「ODA」を40番目の独立した分野に掲げた。扱いの大きさは他党と比べて群を抜いており、文字数にして2000字以上の記述がある。以下、骨子。

1)経済インフラ分野が約3割も占める経済インフラ偏重をあらため、食糧、保健、教育など基礎的生活分野(BHN)や社会セクターへの支援をODAの中心にする

2)後発開発途上国(LDCs)への援助の比重を高める

3)ODA支出額について、先進国の目標とされるGNP(国民総生産)比0.7%の達成に向けて努力する

4)ODAを増額するため、今年2月に発表した経済提言(「消費税大増税ストップ!社会保障充実、財政危機打開の提言」)で提案した「為替投機課税」をはじめ、国際連帯税、タックスヘイブン課税の強化も含め、財源を広く検討する

5)世界銀行など支援にかかわる国際機関において、途上国の発言権拡大を求める取り組みを支持する

6)日本の都合を優先したODAでは、相手国で期待された目的を十分に達成することができないケースが多くみられた。相手国の主体性を尊重し、住民のニーズに第一義的に応え、説明責任を十分にはたす。そのために、ODAの基本理念や、ODAに関する国会の責任と権限を明確にし、NGOの関与の仕方とそれへの支援などを盛り込んで、ODA基本法を制定する

7)日本の経済協力における官民協力では、民=企業という場合が多く、ODA予算のごくわずかしか、NGOが参加できる案件がない。NGOの持つきめ細かい対応や、情報、政策提言などを生かせるよう、ODAの計画から実施までのあらゆるレベルで、NGOの自立性を尊重しつつ、パートナーとして参加を位置づける体制(予算、協議や情報発信の場の提供など)をととのえる

社民党

社民党は「選挙公約」の中で「国連中心の外交政策をすすめ、非軍事面の国際協力を推進する」とうたっている。国際協力の扱いの大きさは共産党に次ぐ。中身の濃さは随一だ。詳細は以下の通り。

1)安全保障理事会のあり方を見直すなど、国連の民主的改革を推進し、大国主義ではない民主的な国連をめざす

2)ODA予算を国民総所得の0.7%という国際目標の実現に向けて増額する。ODAを途上国の貧しい人々の生活向上や自立に真に貢献するものに改革する

3)ODAの質を確保するための「援助・開発効果」の考え方に立脚し、途上国の開発政策を尊重し、ODAの説明責任を強化し、他の援助国や国際機関・NGOなどと協調して援助を行なうなど、長期的な視点で国際社会の信頼を得られる援助外交を目指す

4)世界の貧困を2015年までに半減することを掲げた国連の「MDGs」の実現を推進するとともに、すでに制定プロセスに入っている2016 年以降の開発目標や枠組み(ポストMDGs)が、真に途上国の貧困解消に役立つものになるように、国際交渉における日本のリーダシップ発揮に努める

5)ODAを社会開発、人権、女性支援、環境保全など「人間の安全保障」重視に転換する。人権の視点を援助の基礎に据える「権利ベース・アプローチ」(RBA、経済的・社会的・文化的権利を含む人権の概念を中心に据えた開発を行なうこと)をODAの理念として採用する

6)ODAの目的や役割について定めた「ODA基本法」を制定し、現在各省庁に分かれているODAを一本化し、上位政策の形成から案件実施までを統合的に管理・運営できる効率的な開発援助行政の仕組みを整える

7)海外の大規模災害への緊急援助や、途上国の開発支援のための協力などに積極的に取り組む。PKOへの参加は、憲法の枠内の人道的な活動に徹する

8)アフガニスタン復興支援や南スーダン支援については、非軍事・文民・民生を原則として人道面の支援に積極的に取り組む

このほか、途上国の債務や貧困、環境破壊など、地球規模の課題を解決する資金を地球規模で捻出することを目的とする「国際連帯税」についても明記。国際航空券に課税する「航空券連帯税」、投機的短期資金の移動抑制と途上国の貧困・環境破壊などの解決を両立できる「金融取引税」の導入を進める、と盛り込んだ。

日本維新の会

日本維新の会は「維新八策」の中の7番目に「外交・防衛」を掲げている。基本方針は、「国連PKOなどの国際平和活動への参加を強化する」「ODAの継続的低下に歯止めをかけ、積極的な対外支援策に転換する」など。

また、4番目の「教育改革」の中では「世界標準の英語教育と海外留学支援、最先端を行くICT(情報通信技術)教育環境」を挙げている。

未来の党

未来の党は「未来への約束」の中で「外交」を掲げるが、国際協力については「安全保障基本法の制定と国連平和維持活動への参加を進める」との記述のみ。

みんなの党

みんなの党は「アジェンダ2012」の中で、外交方針のひとつとして「世界の平和と安定に貢献する」と明記した。以下が詳細。

1)「人間の安全保障」の観点から、地球環境問題、食糧危機、水不足、教育、医療・福祉、貧困撲滅などの分野で、ODAなどを使って人的・技術的・資金的に貢献する

2)唯一の被爆国として「核廃絶」の先頭に立ち、「核軍縮」や「核不拡散」に主導的役割を果たす。広島、長崎で世界軍縮会議を開催する

3)安全保障理事会の常任理事国入りも含め、国連改革を実現。日本人の国連職員の増加を図る。外務省における多国間外交実施体制を強化する

4)インド洋やマラッカ海峡の海賊・テロ対策のために、海上保安庁やJICAによるODAで各国の海上保安機関の能力向上に貢献する

5)平和構築・平和維持を外交政策の柱として、国連の人道援助活動やPKO活動に積極的に参加。世界の紛争地の和平仲介や調停に取り組む

6)「難民保護法」を制定し、難民(政治亡命者)に対する保護を充実させる