フィリピン・セブ市にあるカルボンマーケットのDVDショップで売られるディズニーアニメ、洋画はほぼすべて海賊版だ。値段は、数本入りで30~45ペソ(約77~116円)。海賊版人気は衰えていないが、その一方でこの国では「有料の動画サービス」が台頭してきた。
海賊版DVDのメリットは、なんといっても値段の安さだ。映画館で見ると150~200ペソ(386~515円)、オリジナルDVDだと100~200ペソ(258~515円)もする。映画館だと1枚のチケットで1度しか見られないが、DVDを購入すれば何度でも再生可能。また、未公開映画「進撃の巨人2」もすでに手に入るなど、品ぞろえも抜群だ。
だがデメリットもある。画質が粗いこと、DVDそのものが壊れているリスクがあること、再生するデバイスがウイルスに感染する恐れもあることなどだ。映画好きでホテル勤務のグレッチェン・セローテさん(女性)は「オリジナルのDVDは値段が高い。収入がもっとあれば、高品質のオリジナルを買って観たい」と話す。
海賊版DVDと正規DVDのニーズの隙間を縫うかのように、フィリピン大手通信会社PLDTは2015年から、21世紀フックス社と提携し、動画配信サービスを開始した。インターネットの使用料に月額99ペソ(約255円)を追加すれば、映画やドラマスポーツといったチャンネルを、インターネット回線を利用して視聴できる。
ユーチューブも、動画の有料オンラインレンタルに力を注ぐ。価格は、旧作映画で約100ペソ(約258円)。友人や家族と海賊版DVDを家でよく観るジャネファー・ロシマさん(ホテル勤務)は「ユーチューブのレンタルは高いから使用する気になれない。もし30~40ペソ(77~103円)だったら試してみたい」と興味を示す。
動画配信サービスは、海賊版DVDと比べ、画質や安全性などのクオリティが高い。ネックなのは価格。価格をどこまで下げられるかが今後の鍵を握るといえそうだ。