2015-10-08

ILO新刊:緩和はしたものの、終わるにはほど遠い若者の就労危機

世界の若者の失業問題の推移(1995年~2015年)

世界の若者の失業問題の推移(1995年~2015年)

2007年から2010年にかけて急上昇を示した世界の若者の失業率は、依然として危機前水準の11.7%よりははるかに高いものの、2014年にも13%で安定を続けています。2012年と比較すると、2014年の若者の地域別失業率は欧州連合(EU)を含む先進国経済で1.4ポイント、EU以外の中・南東欧及び独立国家共同体(CIS)諸国、中南米・カリブ、サハラ以南アフリカで最大0.5ポイントの低下が見られたのに対し、横ばいが続く南アジアを除く他の地域では上昇しています。若者の失業者数は世界全体で7,330万人と、2009年のピーク時より330万人少ないものの、労働力人口自体が減っているために失業率は高止まっており、実際、2015年には13.1%に上がると予想されています。10月8日に発表されたILOの定期刊行物『Global employment trends for youth(世界の雇用情勢-若者編・英語)』2015年版 は、2014年の世界の若者の雇用情勢をこのようにまとめた上で、「いまだに世界全体で若者労働力の約43%が失業しているか、働いていても貧しい暮らしを送っている事実から目を背けてはならない」と説いています。

労働力に占める若者の割合が次第に低下してきている理由の一つは、教育を受ける若者が増えていることですが、低所得国ではいまだに全く学歴のない若者が31%を占めるといったように、低い年齢で学校を止めて仕事に就く若者がいまだに数百万人に上っています。報告書はまた、ほとんどの地域で女性の労働力率は男性を大きく下回り、失業の可能性は男性より高いといったように依然として残る男女格差に光を当てています。

先進国では就職する若者が増えていますが、仕事の質は期待を下回っており、さらにまた、例えばEUでは求職期間が1年を上回る若者失業者が3人に1人を超えるといったように、依然としていまだにあまりにも多くの若者が長期失業の問題に直面しています。一方で、途上国は依然として構造的失業、非公式就業、働く貧困層の問題を抱えています。1日2ドル未満で暮らす働く貧困層はこの20年で減ったとは言え、いまだに途上国では若者労働者の3人に1人に相当する1億6,900万人がこの層に含まれ、1日4ドル未満で暮らす層を含むと2億8,600万人に増えます。

報告書はまた、最近行われた「学校から仕事への移行調査 」から得られたデータに基づく新たな証拠を提示しています。安定した仕事を希望する若者が移行に要する期間は平均19カ月で、大卒者の移行所要期間は初等教育修了者の3分の1となり、ほとんどの場合、女性の移行期間は男性よりも長くなっています。

科学技術、就労形態、雇用関係における急速な変化、新たな開業形態の登場は、労働市場の新しい状況に合わせて絶えず調整を図り、技能のミスマッチに対処することを要請しています。人間らしく働きがいのある仕事に移行する最善の機会を若者に提供するには、可能な限り質の高い教育訓練への投資、労働市場の需要に合った技能の提供、契約種別に関わりなく提供される社会的保護と基本的なサービスを受ける機会、そして若者が性差、所得水準、社会的経済的背景にかかわらず、生産的な雇用を達成できる平等な地歩の形成が求められます。官民投資及びその他の経済成長回復措置の利益を獲得するには、雇用創出を優先事項としつつ、特に不利な立場にある若者に対象を絞った取り組みの組み合わせが必要です。

報告書を作成したILO雇用政策局 のアジタ・ベラル=アワド局長は、「今日の若者の労働市場への移行は容易ではなく、景気低迷が世界的に続く中、この状態は続く可能性が高いこと、そして、若者の就労を後押しする対象を定めた活動に向けた投資の増大は報われること」を「私たちは知っています」として、今こそ、若者の就労を支援する活動の規模拡大を呼びかけています。また、9月に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ 」、そしてその目標8による若者の就労の強調は、より大規模に活動を支援する幅広い世界的なパートナーシップを動員する新たな機会を提供しています。危機が今日の世代に残した傷跡を緩和すると同時に、より包摂的な労働市場及び社会を確保するためにはさらなる投資が求められます。

 

若者の地域別失業率の推移(1995年、2005~14年)

若者の地域別失業率の推移(1995年、2005~14年)

プレスリリース:http://www.ilo.org/tokyo/information/pr/WCMS_413211/lang–ja/index.htm