国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)はこのほど、世界各国の自然災害に対する脆弱性や遭遇しやすさを数値化した「世界リスク指標(WRI)」を発表した。これによると、災害リスクが最も高いとされた国は、南太平洋のバヌアツだった。2位はトンガ、3位はフィリピン。上位15カ国はすべて赤道近辺に位置し、うち6カ国は島国だった。WRIは「世界リスク報告書2015年版」の中で出された。
WRIは28の指標をベースに算出する。指標は、地震・洪水・飢きん・海面上昇など自然災害の脅威にさらされている国民の数、災害の影響を受けやすいスラムの居住者数や貧困層の割合、災害が起きても対処できる医師や病院の数、政府の汚職度合い、保険の加入率、公衆衛生への支出、森林管理の状況、識字率――など多岐にわたる。
WRIのランキング(対象171カ国)をみると、リスクが高いほうから上位50カ国の大半をオセアニア、東南アジア、中央アフリカ、サヘル諸国が占める。先進国は、ブルネイ(12位)と日本(17位)、オランダ(50位)だけ。この3カ国はいずれも、「自然災害への脅威にさらされている」という地勢的な項目でそれぞれ6位、4位、12位との評価を受けた。
一方、災害リスクが最も低かったのはカタール(171位)だ。サウジアラビア(169位)、バーレーン(164位)、アラブ首長国連邦(163位)などとあわせ、中東諸国の災害リスクは軒並み低かった。いずれも外海に面していないのが特徴。
世界リスク報告書2015年版は、「災害リスク」と「食料不足」は相関関係にある、と指摘している。災害が起きると被災地の食料事情が悪くなるのは明らかだが、食料不足も逆に災害リスクを高めるという。その理由は、食べるのに困った地方の人たちが移動を強いられる場合、その移動先はたいてい、急斜面や川岸など災害リスクの高い土地となるからだ。
世界では25 億人が農業に依存して暮らす。災害への強じん性を高めるには、農業や農民をいかに守るかが大きなポイントとなる。報告書は、国際社会は食料安全保障に投資すべきだとして次の提言をする。
- ・先進国の企業と消費者は、自然を破壊する方法で栽培される農作物の売買・購入を拒否すること
- ・単一栽培をやめ、土地の気候に適した種子を使うこと
- ・地球の気温上昇を2度以内に抑えるよう各国が努力すること
- ・土地の所有権を保護すること
- ・農業に代わる生活手段を創造すること