日本で「タナカ」といえばポピュラーな名字のひとつ。だがミャンマーでは、ポピュラーな伝統的化粧品のひとつだ(タナカという木をすりおろし、ペースト状にしたもの)。美白、保湿、清涼効果が得られ、ミャンマー人から長年愛されてきた。今でも街を歩くと、老若男女問わず、ほおや額にタナカを塗っている人たちを見かける。
しかし最近、タイや韓国などからコスメ製品が流入し、若い女性のタナカ離れが進んでいると聞く。ヤンゴン大学周辺で女子大生31人へインタビューしたところ、背伸びしたい乙女心から外出時にタナカを使わなくなる実情が見えてきた。
「タナカを塗って出かけていたのは高校生まで。今は出かけるとき、化粧をしていくわ」と答えるのは、ヤンゴン大学法学部1年生の仲良し8人組。なかでもメイ・ノェ・マーさん(17)は大のおしゃれ好き。「化粧をすることは楽しい。服の色に合わせて口紅の色を変えられるし、おしゃれの幅が広がったわ」と話す。高校生までは、親の方針や学校の規則などで化粧できないため、大学入学後に化粧デビューしたという女子大生が多かった。
おもしろいのは、化粧をしていた女子大生27人の85%にあたる23人が、家ではタナカを使用していたことだ。家でタナカを使う目的で最も多かったのは「朝・夜の保湿用」。続いて「化粧の下地用」「暑い時のクールダウン用」など。
タナカを塗ると肌の状態が良くなることから、日本でいう美容パックとして使用しているケースが多かった。出かける時にタナカを避けるようになったのは「子どもっぽいから」「外国人に不思議がられて恥ずかしくなったから」「化粧をするとより自信をもてるから」だそう。周囲の目を気にして、大学生になるとミャンマー女子たちは外でタナカを塗らなくなるようだ。
ただ外出時に利用しなくなっただけで、女子大生たちは家用のスキンケアとしてタナカを愛用していた。南国の日差しが強いミャンマー。これからもタナカは、ミャンマー美女の肌を守り続けていきそうだ。