フィリピンの大学生はアルバイトをしない――。フィリピン大学(UP)セブ校に通う大学生20人にアンケート調査をしたところ、95%が「していない」と回答した。UPセブ校の学生は上流階級の出身者が多い。アルバイトをしなくても生活できるのは親から小遣いをもらっているからだ。
金額は1週間に平均1163ペソ(約3500円)。月額にして4652ペソ(約1万4000円)だ。受け取り方は様々だが、実家から通う学生は毎日その日の分をもらい、地方からやってきた学生は1週間分をまとめて受け取っているようだ。調査対象の中で最高額をもらっていたのは、生物学を専攻するランスくん(18)で1週間2100ペソ(約6300円)。毎日実験や課題に追われ、アルバイトをする時間がないのだという。
フィリピンの労働法によると、セブの最低賃金(1日)は非農業従事者で295~353ペソ(875~1060円)、農業従事者で275~335ペソ(825~1005円)。ランスくんの1日の小遣いの金額(300ペソ=900円)と大差ない。
小遣いの使い道で一番ポピュラーなのは「食費」だ。フィリピンには間食(ミリエンダ)の習慣があるが、授業の合間や放課後などにポテトチップスを食べれば小袋で5~10ペソ(15~20円)。ランチを学食でとると、おかずとご飯で60~70ペソ(180~210円)で済む。フィリピンで人気のファーストフード店「ジョリビー」に行けば約100ペソ(約300円)だ。観光客も行く高級ショッピングモール「アヤラモール」のカフェに入ると、サンドイッチと飲み物で約300ペソ(約900円)。学生が頻繁に利用するには高めだが、ランスくんの小遣いならまかなえる。
UPセブ校の学生がアルバイトをしない理由は「勉強に集中したいから」だ。放課後の過ごし方について質問すると、ほとんどの学生は、当たり前のように「家(または寮)に帰って宿題をする」と答える。たくさん書き込んだ教科書を持ち歩いていたり、分厚い資料を見ながらレポートを作成していたり、とUPセブ校のキャンパスには実際、勉強熱心な学生が多い。
現在はアルバイトをしていないが、以前したことのある学生もいた。仕事のほとんどが家庭教師や小学校の先生のアシスタントだ。教える対象は、地元の小学生から高校生、日本や韓国をはじめとする留学生など。時給は60ペソ(約180円)で月に30時間働く学生もいれば、週末だけの学生もいる。「何よりも自由に時間が選べて融通が利く」との理由で大学生には人気が高い。
UPセブ校の学生の親の多くは、政府関係者や会社役員など経済的に余裕がある層だ。親子で1日中働いてもその日暮らしの家庭がある一方で、経済的な心配とは無縁で、勉強に集中でき、しかも小遣いまでもらえる学生もいるのが実情だ。