フィリピン・セブ市に「チルドレン・オブ・セブ・ファンデーション」(CCFI)という子ども向けシェルターがある。保護しているのは3歳から16歳の子ども37人(男子21人、女子16人)。2007年の安倍昭恵首相夫人の訪問や、日本の通販会社フェリシモによるアクセサリー販売の利益一部の寄付、セブで英語を学ぶ日本人によるボランティアなど、日本とのかかわりも深い施設だ。
CCFIは、ストリートチルドレンや親から虐待された子どもを、地域のバスや船の運転手などと協力して救い出している。
しかし、救出行為に比べ、保護した後の社会への復帰プログラムはなおざりにされているのが実情だ。原因は「一番近くで手助けしてくれる親がいない」「障がいによって会話もままならない」「教育が足りない」という3つの不足要素があるからだ。
親の手助けは子どもの成長にとって重要となる。しかし、CCFIに保護された子どもたちには親がいない。祖父が日本人で、ソーシャルワーカーとしてCCFIで活動するフジコ・デ・ベラさんは「この施設に来た子どもの7割は親の元に戻れない。虐待を受けた子どもを親に戻すには、親を徹底的に調査しなければいけない。家族を作り直すのはとてつもなく困難だ」と言う。
知的障がいや心理的ダメージを受けた子どももCCFIにはいる。こうした子どもが再び学校に通えるようになるのは難しい。シェルターの中に知的障がいの子どもが1人いたが、彼は腕を掴んで引っ張ったりと会話することのできない様子だった。
フジコさんは大学で心理学を学んだ。その知識を使って子どもたちにカウンセリングをしている。だが子どもに心理療法士はつけていない。フジコさんは「精神的に参ってしまっている子どもに活動意欲を持たせるのは困難だ」と悔しさをにじませる。
シェルターでの教育も不十分だ。フジコさんは「高校に通う子どもは10%。残りの90%はシェルターで授業を受けている」と言う。しかしシェルターで教育を受ける生徒は、学校での教育に比べて大きく遅れをとる。シェルターでの学習時間は1日のうち10~12時のわずか2時間だ。
保護することだけではなく、その後社会に復帰させていくまでの道のりも同時並行で考えていく必要があるのかもしれない。