ミャンマーのマドラサに通う子どもたち、将来の夢は 「サウジで先生」

マドラサの先生になるという夢を追い、マドラサでは日々、子どもたちがアラビア語と格闘している(ミャンマー・ヤンゴンで)

ミャンマー・ヤンゴンのサウスオカラッパ地区にあるマドラサ(イスラム学校)で15人の子どもにインタビューしたところ、15人全員が「マドラサの先生になりたい」と答えた。生徒のひとりイェミントゥンくん(12)は「マドラサの先生は高貴な職業。周囲の多くの人から尊敬される」と説明する。

■働きたい国1位はサウジアラビア

どこの国で働きたいか、と質問したところ、サウジアラビアが断トツで人気だった。理由は3つある。

1つ目は、経済的発展だ。生徒のジンテッパインくん(17)は「サウジアラビアは繁栄しているから行ってみたい」と答えた。世界銀行によると、2014年の両国の1人当たりの国内総生産(GDP)は、ミャンマーの1203ドルに対して、サウジアラビアが2万4161ドルと、およそ20倍の差がある。

2つ目は、高い教育水準。サウジアラビアの教育水準はイスラム国家の中ではずば抜けて高い。2012年1月1日付の教育学術新聞によると、アラブ圏の大学のうち、世界学術ランキングで2012年にランクインしたのは4校。このうち3校がサウジアラビアの大学だった。

また同年のQS世界大学ランキングに入った500校のうち、アラブ圏の大学は9校。サウジアラビアのキング・サウード大学(197位)が域内トップだ。ちなみに早稲田大学(198位)、慶應大学(200位)、筑波大学(203位)といった日本のトップ校と同じレベルだ。イェミントゥンくん(12)は、マドラサでの教育を終え、サウジアラビアの大学で学んだのち、先生になることを望んでいる。

■「アラビア語の名前のほうが好き」

3つ目は、イスラム国家であるサウジアラビアに好意的な印象を抱いているからだ。サウジアラビアにはイスラム教の聖地である「メッカ」と「メディナ」という “二聖地”(アル・ハラマイン)がある。

マドラサの子どもたちもサウジアラビアが大好きだ。「仏教徒に対して嫌悪感を抱いているわけではないが、サウジアラビアが好き」「ミャンマーの歌は好きではないけど、サウジアラビアの歌は好きだよ」と声をそろえる。

また、マドラサの子どもたちは、ミャンマーの名前とアラビアの名前を持つ。インタビューに応じた6人の子どもは最初、ミャンマー語の名前を名乗ったが、帰り際には「アラビア語の名前のほうが本当は好き」と明かす。

マドラサで学ぶ子どもたちのほとんどは、サウジアラビアどころか、外国に行ったことがない。シーヤーウーくん(15)は「いとこがサウジアラビアの大学で学んでいる」と目を輝かす。

ところがマドラサの子どもたちは、実はミャンマー語しか話せない。マドラサではアラビア語を学習している。「サウジアラビアの大学ではアラビア語の書き言葉を学び、サウジアラビアで先生になりたい」とシーヤーウーくんは夢を語る。

サウジアラビアの魅力を熱弁するシー ヤー ウーくん(左)。ミャンマー・ヤンゴンのマドラサで

サウジアラビアの魅力を熱弁するシー ヤー ウーくん(左)。ミャンマー・ヤンゴンのマドラサで